第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例4]埼玉県 ふじみ野市立福岡中学校
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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達成目標の設定で「学習意欲」と基礎・基本対策

 実は、福岡中学校は02年度から3年間、文部科学省の「学力向上フロンティアスクール」の指定を受け、「指導法と評価の一体化」を研究した。それが引き続き「学力向上拠点形成事業」に取り組むことになり、教師の間には「一定の成果が上がったのに、また同じことをするのか」という雰囲気もあった。しかし、生徒の実態を提示することが、教師の危機感を引き出す大きな要因になったと同事業研究推進委員長の岡田春樹先生は話す。
  「これから皆で研究を進めていこうというとき、抽象論では説得力がありません。客観的なデータから課題がわかれば、『やるしかない』という雰囲気が生まれてきます
  もちろん、「フロンティアスクールで頑張っていたのに、こんなに悪い分野があったとは」という思いも抱いたと山崎先生は話す。
  「フロンティアスクールを始めるときも、夏休みを返上して独自に生徒たちの実態を分析しました。しかし、フロンティアスクールについては、『まず少人数、習熟度別授業ありき』という発想が頭にあったため、生徒の実態に即して指導案を組み立てるという点では、取り組みに不十分な面がありました。今回は、学力調査の結果に基づき、自主的な復習や家庭学習など、自校の課題に焦点を当てて研究しています」
  06年度の研究テーマは「学習意欲の向上」と「基礎・基本の定着」。具体的な方策として、反復学習による「熟達化」を指導の柱に据えた。まず、教科ごとに一つか二つの達成目標を設定。例えば、社会の地理的分野なら「都道府県庁所在地をすべて暗記する」といった目標だ。その実現に向けて、授業では「毎時間復習」「週単位で復習」「2週間の最後の1時間で復習」など、各教師の判断に任せて繰り返し学習を取り入れる(図1)。生徒に目標を達成させることで「できた・わかった・嬉しい」という喜びを感じさせ、学習意欲や学力を向上させるのが狙いだ。
  「定期テストにもその考え方を徹底し、達成目標を常に提示していきました。『試験に出る』と言うと、生徒たちは必ず勉強しますから、意識的にそのように働きかけます。単にできた生徒に手を挙げさせて確認するのではなく、意図的、計画的に繰り返し学ばせるようにするのが狙いです。ただし、そのための教師の作業が煩雑になりすぎると、限られた期間だけの取り組みで終わってしまうおそれがあります。そのため、手間をかけずにできるシンプルな指導法を工夫しました」(山崎先生)
▼図1 授業の改善内容
図1
  図2の「授業研究指導案」からもわかるように、5分間の復習タイムでは、教師は白紙を配付して黒板に問題を書くだけ。生徒は答えを記入して、隣同士で丸を付け合う。こうすることで、教師がプリントを準備する負担を大幅に軽減できる。また、指導案は「熟達化」の具体的な方策に焦点を絞り、A4判1枚に簡略化した。シンプルなフォームにしたのは、教師同士が互いの指導案を見比べ、改善につなげることを狙ってのことである。
▼図2 授業研究指導案
図2
「授業研究指導案」は、教科・単元・クラスごとに作成。熟達化の方策が、クラスの実態も考慮しながら作成されている

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