特集 カリキュラムから考える小中連携

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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発達段階に合わせたカリキュラム編成を

 脳科学の知見から見ても、小5、小6は脳に新たな発達が見られる段階に当たります。人間の大脳は、さまざまな機能がバランスを取りながら成長しますが、特定の領野が優位に発達する時期があります。
  生まれてから3歳までの間に発達するのが、五感と運動をつかさどる領野です。生きるための身体機能をこの時期までに獲得します。
  3歳から7歳にかけては、言語や数を扱う領野が発達します。子どもは大人の真似をし、知識の習得に強い関心を示します。そのため、大人に「どうして」「なぜ」と盛んに繰り返しますが、論理的な能力は発達していないため、大人が適当に答えても案外あっさりと納得します。また、知識を吸収したいという意欲が高いため、ドリル学習などの反復を苦にせず、リズムや音楽をつけるなどの工夫をすると、高い学習効果を挙げることができます。
  そして、9歳から11、12歳にかけては抽象的・論理的思考力が発達します。理屈に合わない大人の指示に反発し、論理で言い負かすことにも喜びを感じるようになります。反復学習を嫌がるため、子どもの抽象的・論理的思考に働きかける学習指導が必要です。
  大切なのは、こうした発達段階に合わせて、9年間を見通したカリキュラムをつくることです。「小6から中1へのスムーズな移行」という観点だけでは、限界があります。
  私は、「基礎」と「基本」を分けるべきだと考えます(図2)。小学校低学年から中学年にかけては、反復学習によって知識や技能をしっかり定着させる「基礎」を身につける時期。一方、小学校高学年から中学校にかけては、知識や技能を用いて、抽象的な概念を論理的に理解する力を磨く「基本」の時期と捉えるのです。基本の時期は、小中にまたがるため、双方の教師が互いに協力しながらカリキュラムをつくることが重要となります(図3)。

図2
基礎と基本は同質のものと捉えられがちだが、本質的には上記のように異なる。基礎は四則計算や漢字の学習などの事項、基本は発展につながる思考の土台となるものとして捉えられる
図3
小・中学校にまたがる「基本」習得の時期の指導を効果的なものとするため、小中の教師が協力することが求められる

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