このように子どもの心理的・生理的成長は、小5を境に転換期を迎えるようになったといえます。そうであるならば、小5以降の子どもには、友だちや家族との人間関係に悩んだり、心と体のバランスに苦しんだりといった、思春期特有の不安や悩みを持つ存在としての接し方が求められるはずです。
ところが、現行の6・3制では、5、6年生も「小学生」として扱われます。この学校制度と子どもの発達段階との食い違いが、子どもの学校不適応につながり、中学校入学で外部環境が変わったときに、一気に不登校や問題行動となって表れると考えられます。荒れる生徒に対して、「小学生のときはよい子だったのに」という言い方をよくしますが、その芽は既に小5、小6のときにあったはずなのです。
私は子どもの発達段階に適合した学校体系として、高校までも視野に入れた「4・4・4制」が最も望ましいと考えています。小学生の範囲は4年生までで、5年生以降は中学生に組み込むというわけです。さらに高校が3年間というのは短いので、4年間に延ばすべきです。事実、現行の6・3・3制のモデルとなったアメリカの学校制度は、心理学や生理学の研究成果も取り入れ、現在では5・3・4制と4・4・4制とで主流を占めます。
しかし、文部科学省の調査によると、保護者の6割以上は現行の6・3・3制を支持しています。とすれば、次善の策として現行区分は維持し、小5、小6を中学校へのつなぎの段階として捉える必要があると考えます。
ただ、子どもの発達には、地域差があります。自尊感情の低下が6年生から見られる地域もあれば、4年生で表れる地域もあるでしょう。必ずしも4年生と5年生の区切りが絶対とはいえません。学校が子どもの様子を見ながら、適切な区分を決めればよいのです。
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