▲安彦忠彦
Abiko Tadahiko あびこ・ただひこ◎早稲田大教育学部教授。専攻はカリキュラム学。日本カリキュラム学会代表理事、日本教育方法学会理事などを歴任。2005年からは中央教育審議会の委員も務める。『カリキュラム開発で進める学校改革-21世紀型授業づくり』(明治図書)など著書多数。
子どもの心理的・生理的成長が以前より早期化していることが、各種データで明らかになっている。そうした中、早稲田大の安彦忠彦教授は、子どもの発達段階に即した生活指導やカリキュラム開発を行うために、小中の更なる連携が重要だと指摘する。
近年、構造改革特区の認定や文部科学省の研究開発学校の指定を受けて小中一貫教育を行う自治体や、小学校と中学校の連携を強化する学校が増えています。その最大の理由は、「中1ギャップ」など小中の接続が課題となっているからであり、背景には、6・3制という現行の義務教育の区分が子どもの成長に合わなくなってきていることが挙げられます。 子どもの身体的・精神的な成長は、大きく変化しています。1950年当時、男子の身長が最も伸びるのは14~15歳にかけてでしたが、03年では12~13歳となり、ピーク時が早まっています。女子についても、かつては12~13歳だったピークが、今は10~11歳です(図1)。また、女子の平均既潮率は、61年は中1で53.1%だったのに対し、93年では既に小6の段階で50%に達しています。 こうした身体面の変化に伴い、思春期も早期化しています。小中一貫教育を行う東京都品川区や広島県呉市の調査では、小5になった途端に自尊感情の低下が急速に進むことが確認されています。自尊感情とは「自分が好き」「自分はまわりの人から認められていると思う」といった自己の存在を肯定的に捉える感情で、この低下は思春期特有の現象です。