特集 生徒が変わる「キャリア教育」
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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求人票を基に職場体験先を選ぶ

 2年生では、1日農業体験やジャーナリストによる職業講演会などで、より社会に目を向けさせる。中心は5日間の職場体験で、職場決定までのプロセスが特徴だ。生徒はまず「履歴書」を書き、教師との「面接」で自分の知りたいことや得意なことをアピールする。並行して、教師は「挨拶ができる」「マナーがしっかりしている」など、受け入れ先の事業所が求める人材像を明記した「求人票」を作って貼り出す。訪問先は、生徒の希望や面接の結果を考慮して決めるのだ。結果は、「採用通知」として生徒に手渡される。どんな生徒も、このときばかりは緊張して両手で受け取るという。このプロセスを経ることで、「生徒は、働くことの重みを感じるようです」と藤井先生は評価する。
 職場体験の事後学習でも、内面の変化を重視した活動を取り入れる。活動日誌に毎日の気分を顔文字で記録させ、活動後に「1週間の気持ちの変化」としてグラフ化、その理由や出来事を振り返らせる(図2)。

図2

 「短期の職場体験では単なる感想で終わることがほとんどですが、5日間の中では、失敗をして気分が落ち込むこともあります。なぜ失敗したのか、なぜ立ち直ることができたのかを考えさせる経験は、人生の大きな糧になるでしょう」(藤井先生)
 研究事業の最終年度となる07年度には、3年生は夢に近づくための職場訪問を行うなど、自分自身の将来に向き合おうとしている。
 キャリア教育の導入で、生徒は変わりつつある。「今の子どもはコミュニケーションが苦手。職場体験で大人から励まされたり、元気づけられたりする中で、『まわりの人たちとのかかわりの中に自分がいる』ということを、生徒が実感できたことが最大の成果」と藤井先生は強調する。3年生の修学旅行では、知らない生徒同士が同じ班にもなったが、うまく話し合いながら計画を立てていたという。また、「失敗をすると意外に気持ちが落ち込むことがわかった」など、自己理解を深めた生徒も多かった。グラフなどの活用で、より客観的に自分を見つめられるようになった。
 キャリア教育は、「働くこと」の意味を学ぶだけでなく、社会性を身につける上でも、生徒にとって貴重な経験になっている。


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