教材制作に当たっては、次の2点に留意した。
「一つは、子どもの興味・関心を引き出せる魅力と豊かな内容に富んだ素材を収集すること。もう一つは、子どもが続けるうちに文字や資料に親しみ、言葉の知識が増えていくよう構成を工夫することです。この2点の延長線上に論理的な読解力が養われると位置づけました」(指導課・藤田昌央指導主事)
ワーキンググループでは、各自が「これは」と思う素材を持ち寄り、議論を重ねた。「メンバーは、『これは教材に使えるだろうか』という目で、毎日、新聞や本などを見ていたと思います」と後藤主幹は話す。
子どもの反応を見るために、試作教材でモニタリングを多くの教室で実施した。例えば、ドッジボールの公式ルールを取り上げた教材は子どもの関心が非常に高く、授業が盛り上がったのはもちろん、授業後に子どもたちは早速校庭に出て、そのルールでドッジボールをしてみるという、自発的な行動へとつながった。
こうした結果も踏まえながら、教材の制作と修正が繰り返された。完成した教材には2学年分で計70テーマが取り上げられているが、持ち寄った素材はその数倍にもなる。テーマを精選する際に重視したのは、「系統性」と後藤主幹は強調する。
「ほとんど本を読まない子どもも含めて、読解力や思考力を段階的に養おうというのが、教材の狙いです。設問の難易度は徐々に難しくなるように設定し、教科学習の内容や指導時期との関連にも配慮しています」
併せて、教師用指導書も制作した。各テーマの目標や留意点、授業展開などのほか、関連する教科の単元も一覧表にして、教科学習にも活用できるように工夫している。更に、1人でも取り組めるよう、子ども向けの解答集も制作した。各校の課題に合わせて、「総合的な学習の時間」や教科学習、朝の学習など、柔軟に使い分けられるようにしている。
教材の活用は始まったばかりだが、実際に教材を手にした教師からは「これは面白いから、子どもに是非取り組ませたい」という声が多数挙がっている。
「知識・理解と自ら学び考えること。今までなかなか結び付きませんでしたが、この教材が橋渡しになってくれると考えています」(後藤主幹)
07年度は、同様に3年生、4年生向けの教材を作成し、読解力養成に力を入れていく方針だ。
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