私が最初に中央アジアを具体的に感じたのは、父の仕事の関係で北京に住んでいた小学生のころです。燃料に使う石炭を運んできたラクダを我が家の前で見て、島国の日本と違い、この地が砂漠へ、中央アジアへ続いていることを実感しました。そこへいつか行ってみたい――。私は幼少時から大陸や奥地が舞台の冒険小説を読むのが好きで、次第に探検家や研究者の書いた中央アジアの本に興味を持ち、「学問がなければ、いい探検はできない」と、大学に進もうと考えました。
志望校は中央アジアの研究ができる東京大にしました。ただ、戦後間もなくのことで、東京大は女性に門戸を開いたばかり。多くの人に「合格は無理」と言われ、私は受験をやめようとしました。そんなとき、ある先生に「落ちて元々、合格したらもうけもの」と言われ、大いに勇気づけられ幸運にも合格できました。 |