東京大で研究する中で、私は次第にチベットに惹かれていきました。文献を読んでもわからないことが多く、行きたくなったのです。しかし当時は、日本人が外国に行くのは考えられない時代。周囲に理解されない中、ただ一人、「中根君、そのうちきっと行けるよ」と言ってくれたのが、京都大の有名な人類学者の今西錦司先生でした。それはとても心強いものでした。インドからヒマラヤを越えてチベットに行けるのではないかと考えた私は、まずインドに渡りました。結果的に政治情勢の関係でチベット行きはかないませんでしたが、ヒマラヤをはじめインドで3年間、村落の在り方や家族関係、カースト制度などを調査しました。
社会人類学は、国や社会、民族などの集団が機能するシステムを解明する学問です。社会によってシステムや価値観は異なり、ある社会では一般的なことでも、ほかの社会の人から見たら不思議に思う行動は多々あります。その行動の背後にあるものは何かを調べ「理論的にメカニズムとしてわかるようにする」ことが社会人類学の面白さです。
私が著書で述べたような日本社会について分析できたのは、インドやイギリスでの調査・研究を背景として日本を考察した結果です。きっかけは、チベットへの思いからインドに渡ったことでした。そのおかげでインドや日本の社会のメカニズムに迫ることができたのです。
中学生の今は、将来何をしたいか決まっていないという人が多いでしょう。そういう人は、自分は何が好きなのか、何がしたいのかをよく考えてみることです。本当に好きなことでないと、一生懸命になれませんし、壁にぶち当たったとき諦めてしまうかもしれません。どんなことでも自分のやりたいことを持ち続ければ、自ずと道は開けると思うのです。
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