指導変革の軌跡 保育園から中学校までが連携し、地域ぐるみで学校の荒れをなくす

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「協同学習」を取り入れ前進し続ける

 今、職員室に溜まる生徒はいない。授業中に廊下を歩く生徒の姿もごく数人になり、例年1割ほどいた不登校の生徒も今年の1年生は大幅に減っている。落ち着きを取り戻した同校は、次へと飛躍しようとしている。その鍵となるのが、全教科での協同学習の指導だ。
 「実は06年の半ばごろには『これが限界かもしれない』という思いがありました。しかし、そんなときに東京大の佐藤学教授の『学びの協同体』の考え方を知り、これだと思いました。子どもと子どもをつないでいく授業を積み上げていけば、学力向上はもちろん、一斉授業で孤立してしまう生徒が教室から出ていってしまうこともなくなるでしょう。すべての指導の基本である授業を見直すことで、本校の長年の課題が克服できると考えました」(森谷校長)
 07年度から全校で協同学習を取り入れたところ、宿題の提出率が上がり、授業中に居眠りをする生徒が減った。また、クラスの人間関係が確立し、これまで教室を抜け出していた生徒が「先生、俺も教室に入れるかなあ」と言ってきたケースもあるという。
 かつては市内の教師はほとんど同校への赴任を望まなかったが、今や希望者も少なくない。教職員野球大会などでは総出で盛り上がるという一体感の下、新たな挑戦を続けられる魅力的な学校へと変貌した。同校のある教師は、学級通信と学年便りに「前へ」というタイトルを付けている。「このタイトルの意味は?」と森谷校長が尋ねると、教師はこう答えた。
 「倒れるときも前を見て倒れる。絶対に後ろを見て倒れんよ、という信念です」
 森谷校長も前進しかない、と確信している。
 「生活が厳しい家庭が多い状況は変わりません。これでよいと私たち教師が止まってしまえば、子どももそこで止まってしまう。今の中1生がこのまま学びから逃げ出さずに3年間を過ごせれば、改革は成功したと言ってよいかもしれません。常に前に向かって挑戦します」

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