地方分権時代の教育行政 栃木県栃木市
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「GDV教育」の推進で学習意欲を高める

 学校における「生きる力を育むコミュニケーション教育」の基盤を支えるために導入したのが、「GDV(グローバルドリームビジョン)教育」だ。これは、NPO法人GDVIの太田惠美子理事長が開発・実践してきた教育プログラム。「ネイチャードリームビジョン」「ワールドドリームビジョン」「カルチャードリームビジョン」「ヒューマンドリームビジョン」「パーソナルドリームビジョン」という5つのステップに沿って、地球環境や職業などのテーマの中から関心のある事柄を子ども自身が選び、納得できるまで調査・研究に取り組む。生涯をかけて自分がどう地球社会に貢献できるかという自発的な夢と、その夢を実現するための構想を持たせるのが狙いだ。
 佐藤康弘教育長は、「栃木市が目指すのは、自分をしっかり見つめて自らの考えを持ち、それを伝えることができ、また、人の伝えようとしている言葉を感じ取れる子どもの育成です。それを可能とするのがGDV教育です」と話す。
 開発者の太田氏も「教育の狙いは子どもを競わせるのではなく、自由に考えさせることで、自分で判断し、決断し、行動する人間を育てること」と説明する。
 06年度は、栃木市立寺尾中学校で1年生の「総合的な学習の時間」を利用してGDV教育の実践研究を行った。
 生徒は、自分が選んだテーマについて本などで調べ、その内容をスケッチブックに図表や文章でまとめていく。そして、作業を通して芽生え、深まった考えや意識を改めて文章化し、最終的に絵で表現する。教師らによる外部からの要請・強制ではなく、生徒自身がテーマを選び、調査・研究を進めることで、環境や社会などの問題を自分につながるものとして考えるようになる。そこに初めて、責任感と自尊心、意欲が育まれるというわけだ。
 取り組みの結果、市の学力調査の一環として実施された意識調査において「自ら学ぶ力」「問題解決力」など、学習意欲に関連する項目が大きく伸び、市平均値を上回った。
 「GDV教育が、自ら学ぶ力の育成につながっていると感じました」(寺尾中学校・相田喜久夫校長)
 今後の課題は、指導法の体系化と、指導者の育成だ。指導法については、寺尾中学校で08年度までの3年間の蓄積を基に体系化を進めていく。指導者の育成については、市内の教師と市民を対象としたGDV研修講座「本気塾」を開講している。市民に門戸を開いているのは、学校外でも実践できる体制をつくるためだ。
 「教師が異動しても、地域の人たちにGDV教育が根付くことによって、取り組みは続けられると考えています」(佐藤教育長)
 栃木市は、家庭・学校・社会の連携によって「自己教育力」育成に向けた継続的・実効的な計画の運営を目指している。


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