特集 データでひもとく学習指導の「いま」と「これから」
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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活用問題を自分で解いて作問力をつけてほしい

 活用する力を問うB問題については、かねてからの予想通りの結果となりました。PISA(※1)の結果に表れている通り、日本の子どもが「活用」への課題を抱えているのは事実です。それにもかかわらず、学習指導基本調査では、基礎・基本に回帰する裏側で、体験や表現活動、自分で調べる学習、自由な議論、教科横断的な授業など、「活用」に密接にかかわる学習が軽視される傾向が見られました(P.8図1P.9図2)。基礎・基本の習得に授業の軸足を置きすぎるあまり、活用する力を高める指導への意識が薄くなっていることが懸念されます。
 「知識」と「活用」は、切り離せるものではありません。どちらか一方だけを重視せず、両輪として育てる意識が必要です
 まず、担当の学年や教科に関係なく、教師全員がPISAの問題や学力調査のB問題を解き、校内で活用問題に関する共通理解を深めるべきでしょう。そうすれば、例えば数学の情報の取り出し方にも国語の要素が含まれるなど、決して特定の教科だけの問題ではないことがわかります。課題を解決する、論理的に考える、自分の意見を発表する、正しい言葉でコミュニケーションを図るなど、すべての教科学習および生活指導において、活用問題へのアプローチが可能なことにも気づくはずです。
 指導のノウハウが蓄積されている「知識」領域に比べ、活用する力を伸ばす学習を授業に取り入れるのは容易ではありません。実際、B問題を初めて目にして、「こうした問題を解く能力は、どのように育てればよいのか」と戸惑う先生方は多いでしょう。自力でノウハウをつくり上げることができる方もいるでしょうが、経験不足や多忙により難しいのが現実です。国や教育委員会による積極的な支援や研修の導入が望まれます。
 また、学習指導基本調査の結果からは、市販プリントやテストを用いる教師が増えていることがわかりました。活用する力をつけさせるためには、目の前の生徒の実態をきちんと把握した上で、どういう力をつけさせたいのかを見極め、指導のプロセスの中で、意図した力が育っているかどうかを確認する必要があります。そのためには、市販のテストではなく、教師自身が生徒の力を測るテストを作る必要があります。できるだけ作問の機会を増やして、そうした能力を磨いてほしいと思います。

※1 OECD(経済協力開発機構)が実施する、15歳児(日本では高校1年生)を対象とした国際的な学習到達度調査。2000年に第1回の本調査を行い、以後3年ごとに実施。07年12月に結果が発表された2006年調査は第3回。第1回は読解力、第2回は数学的リテラシー、第3回は科学的リテラシーを重点的に調べている。

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