特集 データでひもとく学習指導の「いま」と「これから」
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 5/18 前ページ 次ページ

データの分析や活用が今後ますます重要に

 学習意欲に関しても興味深い結果が出ています。PISAなどの国際比較調査から、日本の子どもの学習意欲の低さが以前から指摘されてきました。しかし、01および03年度に文部科学省が実施した教育課程実施状況調査の同じ質問の結果と比べると、学力調査では、小・中学校共に算数・数学と国語に関して「勉強が好き」「大切だと思う」「将来、社会に出たときに役に立つと思う」など、肯定的な意識が、概ね高くなっています(下図)。両者の関係をどう見るのかは難しいですが、勉強の大切さを、教師が意識して生徒に伝えている結果かもしれません。

図
出典:2007年度「全国学力・学習状況調査」結果概要(文部科学省・国立教育政策研究所のサイトへ)
過去に行ったほかの調査との比較については、01年度教育課程実施状況調査と03年度教育課程実施状況調査における 同一質問の調査結果を使用している

  07年度に全国一斉の学力調査が実施されましたが、その受け止め方はさまざまでした。教育の成果を数値で表すことを好まない先生方もいるでしょう。しかし、今後、学校も個々の教師も、データの分析力や活用の方法をレベルアップさせることが重要になるのは明らかです。
 「教育の成果は数値だけでは測れない」という考え方は、従来の教育が重視してきた「美徳」でした。しかし、それが逆に社会から理解されにくい体質をつくり上げている側面も否定できません。確かに、「子どもの目の輝き」といった客観的な指標では測りにくい面はありますが、中には数値化できるものもあります。
 保護者への説明責任が高まる今、数値で提示できる成果に関しては、そうすべきだと思います。それが全体の成果の一部に過ぎないことは、きちんと説明すればよいのです。
 データを参考にする上で注意すべき点は、全国的な課題が必ずしも自分の担当する学級に当てはまるとは限らないことです。分析の際には、全国や都道府県の平均に加え、自分の学級のデータから実態を正確に把握してください。学校全体としては、「助けを必要としている学級はないか」という視点も持つべきでしょう。そのように客観的な指標となるデータを多角的に捉えることで、これまでの経験と勘だけでは見ることが難しかったものが見えるようになるなど、教師の側も大きなメリットを得られるに違いありません。

* * * * *

 次ページからは、学習指導基本調査の具体的なデータを「基礎的・基本的な知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学習意欲・学習習慣」「生徒と向き合う時間の確保」の四つのカテゴリに分けて解説する。併せて、今後の指導を考える際のアドバイスや次期学習指導要領の基本的な考え方も適宜紹介する。


   PAGE 5/18 前ページ 次ページ