では生徒に対しては、具体的にはどのような指導を行っていけばよいのだろうか。
「大切なのは、リスクを具体的に説明することです。例えば、安易に顔写真や下着姿の写真を載せると、その写真が二次利用されて、わいせつサイトで使われるといったことも起きる。また学校名などの情報から個人を特定されて、ストーカー被害に遭うこともある。学校裏サイトでの誹謗中傷では、警察沙汰(ざた)になれば、被害者ばかりでなく加害者も不利益を被ります。そうした事例を挙げながら、生徒にケータイ遊びに潜む落とし穴を理解させるのです。モラルに訴えるだけでは他人事だった生徒でも、自分の身は守りたいですから、ケータイ遊びのわなについての話であれば真剣に耳を傾けます」
実際に学校裏サイトでトラブルが起きたときには、感情的に対応しないことが大切だという。ある中学校では、学校裏サイトでの生徒の悪質な書き込みに驚いた校長が、朝礼で「こんなバカなことはやめなさい」と怒鳴ったところ、すぐさま裏サイトは「止められるものなら止めてみろ」といった挑発や、教師を中傷する言葉で埋めつくされることになったという。
「生徒に対しては、君たちのしていることは前から知っていたよ、という態度を見せます。生徒たちは、大人が入り込めない秘密基地の感覚で学校裏サイト遊びを楽しんでいますが、大人の目が行き届く空間であることを意識させるのです。そしてケータイ遊びのリスクを説明して、自分たちのしていることを客観視させます。
一方で保護者への対応も必要です。保護者を集めて、子どもがケータイでどのような遊びをしているかを説明し、ケータイを買い与えた保護者に責任感、危機感を持ってもらうのです。こうした対処は、先生方がケータイのメディア特性を理解していれば十分可能です」
これまで中学校では、「校内への持ち込みを禁止にすれば、それで学校でのケータイ問題は解決」と考える風潮もあった。しかしたとえケータイを「校内持ち込み禁止」にしたとしても、生徒たちがケータイの世界で遊んで問題が起きれば、学校が責められる。バーチャルな遊び場の危険から生徒を守るために、学校と家庭が一体となった対応が求められている。 |