2008年5月に、ベネッセ教育研究開発センターは「第3回子育て生活基本調査」の報告書を刊行した。 この調査は、小学生から中学生の子どもを持つ保護者を対象に、教育やしつけに関する意識や、子育て生活の実態を探るために、4、5年ごとに実施しているものである。 今回は、調査結果から浮かび上がってきた、中学生の保護者の意識・実態を報告する。
本調査は1998年、2002年の過去2回実施した。今回(07年)と併せて計3回の調査結果を経年で見ると、保護者の教育観・子育て観は変化していることがわかった。 まず、保護者と子どもとのかかわりが密になってきていることが挙げられる。子どもの意思を尊重するというよりも、親の判断を優先させる傾向が強まっている。 学力にこだわる保護者も増加した。高い学力を望む意識が強まり、高学歴を期待する割合が増えた。教育費の数値に大きな変化はないが、教育費をかける家庭とかけない家庭の二極化が進んでいた。 次に、「子どもが一人でできる」と保護者が感じている生活習慣の割合が減っている点が挙げられる。保護者の関与が強まったこととの詳しい因果関係は不明だが、子どもの生活習慣が身についていないと感じることが多くなっているようだ。 調査結果からは、全般的に一生懸命に子育てをしている保護者の姿が見えてきた。しかし、学力に対する意識や教育にかける費用などは多様化している。家庭の状況をひとくくりに考えて対応していては、トラブルを招く危険性もある。保護者とのコミュニケーションを密にして、それぞれの家庭の様子を把握することは、学校運営のためにも今後ますます重要になるといえるだろう。
「第3回子育て生活基本調査」
■調査主体:ベネッセ教育研究開発センター ■調査テーマ 小中学生の子どもを持つ保護者の子育て生活の実態、しつけや教育に関する保護者の意識 ■調査方法 学校通しによる家庭での自記式質問紙調査 ■調査時期 第1回調査:1998年12月、第2回調査:2002年9月、第3回調査:2007年9月 ■調査対象 【1998年調査(第1回調査)】首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の小学3年生から中学3年生の子どもを持つ保護者4,718人(配布数8,380通、回収率56.3%) 【2002年調査(第2回調査)】首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の小学1年生から中学3年生の子どもを持つ保護者6,512人(配布数9,038通、回収率72.1%) 【2007年調査(第3回調査)】首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の小学1年生から中学3年生の子どもを持つ保護者7,282人(配布数9,962通、回収率73.1%) ■調査項目 子育ての悩み・気がかり/しつけや教育の情報源/子どもの日ごろの様子や生活習慣/子育てで心がけていること/家庭の教育方針/配偶者との関係/子どもの家庭学習の様子/学習へのかかわり/子どものメディアの利用/子どもの休日の過ごし方/学校の取り組み・指導に対する満足度/学力観・勉強観/希望する進学段階/習い事・塾/教育費/子育ての楽しさ *今回取り上げたデータは、すべて中学生の子どもを持つ保護者の回答をまとめたものである