1グラムの土の中に、微生物がどのくらいいるか知っていますか。その数、なんと1億個以上。微生物は肉眼で確認するのも難しいくらい小さな生き物ですが、有用な化合物をつくり出すものもあります。例えば、現在使われている薬の約4分の1は、微生物の生産する化合物からつくられているのです。
1979年に私共が発見した抗寄生虫薬エバーメクチンもその一つです。エバーメクチンを基にしてつくられた薬は主に畜産に貢献し、20年余りに渡って世界の動物薬の売り上げ1位を記録しています。この薬は人間の寄生虫にも効果があり、アフリカの風土病で重度の視力障害を引き起こすオンコセルカ症の特効薬として、1年間で7000万人以上の人々に投与され、失明から救っています。
そうした素晴らしいパワーを持つ微生物と出合ったのは、化学を学んできた私が恩師の誘いで、山梨大の発酵生産学科で助手をしていたときです。微生物の一つである酵母で発酵の実験をしていたとき、酵母の働きによってブドウ糖があっという間にアルコールに変化する様子に心が揺さぶられました。「人間ができないことを可能にする微生物はすごい」。この出合いが、私の研究人生の出発点になりました。
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