地方分権時代の教育行政 愛知県名古屋市
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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地域とのつながりを深める「夢・チャレンジ支援事業」

 同市では、地域の学校として、地域ぐるみで学校をつくり上げていく姿勢を貫いている。以前から家庭や地域との連携に力を入れていることから、大都市ながら学校と地域とのつながりが深く、保護者の学校に対する満足度も比較的高い、といった特徴がある。通学路での保護者や地域の人による見守りなどが失われる可能性があるため、学校選択制の導入は今後も予定していない。
 この方針の下、生徒主体で学校を活性化させ、地域との交流を深める取り組みの一つが、「中学生による『夢・チャレンジ』支援事業」だ。生徒が自主的に企画・運営する企画か、全校規模の取り組みが可能な企画か、といった観点で市教委が選考し、1校当たり最大63万円を援助するというもの。年間予算総額630万円の中で実施校を決める。1999年度に始めて以来、10年間で延べ273校が応募。08年度は27校が応募し、16校の企画が支援されている。
 企画の内容は、リサイクル活動や校訓づくり、校歌のアレンジなどさまざま。ここ数年は、生徒が地域参加を求めたり、地域に向けて発信したりする企画が増えている。植物を育てて地域の施設に贈呈したり、校区内の公園などを地域の人と一緒に清掃したりといった活動だ。指導室の内藤典子指導主事は、「生徒が地道な活動にも目を向けていることを頼もしく感じます。もっと地域とのかかわりを深めたい、自分たちの学校をアピールしたいと考えている表れでしょう。中学生の活動に対して、地域からの期待も高まっているようです」と話す。
 同事業のもう一つのねらいである学校内の活性化について、内藤指導主事は次のように話す。
 「生徒に活動への参加を押し付けても乗ってきません。ところが、まわりの生徒が学校を楽しくしようと盛り上がっていれば参加しやすい状況が生まれます。生徒の自発性を引き出すことは、各校でも留意している点。生徒の活動を支援する事業は、生徒の積極性や自発性を生むと考えています」と話す。今後は、これまでに応募していない学校に対して個別に応募を呼びかけていく考えだ。

環境教育で他市との連携を深める

 このほかの施策として、06年度から始めた「エコ・フレンドシップ事業」(注1)の一環として実施している「環境未来探検隊」がある。市内の小中学生約30人で構成し、夏休みに3泊4日で、06年度は知床や釧路を、07年度は阿蘇や北九州市を訪れ、地域環境への取り組みを学んだ。指導室の加藤幸雄指導主事は、「生活体験が乏しい今の子どもは、訪れた先で見た自然を新鮮に感じたようです。現地の人の説明を聞き、自分たちは自然を守るために何をすればよいのか、子どもなりに考えが芽生えてきました。普段の教科学習がどう役立つのかという視点も持てたようです」と同事業の成果を話す。更に、毎年、全国約15の政令指定都市から代表の子どもを招待し「なごや子ども環境会議」を開催するなど、「環境教育」を通したネットワークづくりにも力を注いでいる。
注1 2005年に開かれた「愛・地球博」の理念を継承し、「環境首都なごや」を担う人材を育成することをねらいとしている

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