記念特集 中学校教育のこれまでとこれから

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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新任時代に痛感した 生徒、保護者との信頼関係

 中学校教育の試行錯誤は今も続いています。社会が変化し、その影響を受けて子どもたちが変われば、教える内容や手段をそれに合わせていくことは当然でしょう。しかし、「人格の完成」と「国家および社会の形成者の育成」という教育の目的は不変であり、教育の土台となるのは子どもとの信頼関係です。私自身、それを痛感しています。
 1974(昭和49)年、「教育内容の現代化」のころに教師になった私は、赴任2年目に担任を任されました。その学校は、授業の抜け出しや対教師暴力などへの指導に大変苦しんでいました。荒れていた生徒はグループで行動していましたが、私が担任をしていた学級にそのリーダー格の生徒がいたのです。グループを抜けさせようと懸命に働きかけましたが、その生徒の行動は改善されませんでした。
 そこで、私は保護者に協力を求めました。生徒の家庭は共働きだったため、私は夜10時過ぎに訪問し、保護者の帰りを待ちました。「(荒れているのは)うちの子だけではない。放っておけばよい」と言う父親に対して、「私は彼を更生させたい。力を貸してください」と理解を求めたのです。そうした家庭訪問を1週間に1回、半年ほど粘り強く続けました。その結果、父親が「わかった、何とかする」と、一緒に生徒に向き合ってくれたのです。
 私は、生徒の心をがっちりつかんで離さない教師になりたいと思っていました。しかし、生徒と教師が互いに信頼し合えるようになるためには、生徒に対してだけでなく、まわりの人たちにも働きかける必要があると学びました。
 その生徒は中学時代には荒れた状態が続いたのですが、その後、立派な社会人になりました。そして、私はその生徒の結婚式に呼ばれました。クラス会は今も開いています。卒業後の生徒の成長までも見届けられることほど、教師冥利(みょうり)に尽きるものはありません。教師として何が必要なのか。生徒たちと真剣に向き合う中から学んでいくというのは、今の先生方も変わらないと思います


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