ベネッセ教育研究開発センター 教育調査室長
木村治生(はるお)
小社では30年以上に渡り、多くの研究者や学校の先生に支えられながら、400以上の調査を行ってきた。 その中での「中学校」をテーマとした調査結果を基に、中学校教育がどのように変化してきたのかを見ていく。
ベネッセコーポレーションでは前身の福武書店時代の1978(昭和53)年に調査報告書『モノグラフ・中学生の世界』を刊行し、以来、その時々の教育や子どもの様子について浮き彫りにしてきた。ベネッセ教育研究開発センターの設立以降も、調査対象やテーマを広げて調査を行っている。 今回はそれらの調査報告から、中学校や中学生は、この30年でどのように変わってきたのかを、中学生の学習にかかわるデータと教師の意識・行動のデータを基に振り返る。 30年前のデータがないものについては、参考にできる最も古いデータで代替した。調査の大半は公立中学校を対象としているが、学年や地域などが異なる条件下に実施されている場合もある。単純に数値を比較できない部分もあるが、今回は細かな差異にはとらわれず、大きな傾向の変化を捉えてみたい。
まず、中学生の学習の様子を見る。以前の中学生は、どのように学習していたのだろうか。 図1に家庭での学習時間の推移を示した。図の注に示したとおり、質問紙のスケール(尺度)が違うため単純な比較はできないが、1980年代前半の中学生は、今の中学生よりも長い時間勉強していたようだ。1983年調査と2004年調査(いずれも2年生の数値)を比較すると、次のようなことがいえる。
第一に、「0分」という回答が大きく異なる。1983年調査では、家庭で学習しない生徒は1割に満たなかったが、2004年調査では4人に1人を超える。第二に、「2時間」を超える割合は、1983年調査では3割であったが、2004年調査では1割強に減少した。 これらの点から、以前と比べて、学習時間がずいぶん少なくなったことがわかる。1983年当時は、一定程度の学習を家庭でしていることを前提として、学校で指導することができた。しかし、現在では「30分」以下が半数を超えており、家庭学習が十分ではないことを前提に指導をしなければならない状況といえそうだ。
<出典>
モノグラフ・中学生の世界:一覧(1978~2004)
第4回 学習基本調査・国内調査 中学生版
第4回 学習指導基本調査
第1回 子ども生活実態基本調査報告書