教える現場 育てる言葉

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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 研究所のカリキュラムは、本科の場合、月曜から土曜まで1時間半の授業が1日に2コマずつ。授業の内容は戯曲をベースにした芝居の稽古に、体操、音楽、殺陣の稽古が週に3コマ。卒業公演を含めて年に3回の発表会を行う。研修科に上がると、週に3コマの必修科目(体操、音楽、ダンス)以外は、発表会に向けた稽古が中心で、1日6時間程度で1か月半ほど続く。発表会は年4回行われる。
 稽古の中で、最も重視されるのはセリフだ。戌井市郎研究所所長いわく、「文学座は文学を原点とする劇団ですから、授業では言葉、つまりセリフ回しを最も大切にします。現代人の生活感情に根ざした舞台は、リアリティのあるセリフ回しによってこそ成り立つもの。本科では、ともかく観客に伝わるセリフを舞台の上で喋れるようになることを目指します」。
 文学座の座員はセリフがうまいとの評判が高く、声優としてのニーズも多いが、この点に劇団の出自が関係しているというから面白い。鵜澤秀行主事が平田オリザの言葉を借りていうには、プロレタリアート劇団として出発した劇団の場合、セリフ中の”主張したいこと“を強調する稽古をするため、”強弱“でセリフを喋ることになる。
 一方、芸術至上主義を標榜してきた文学座の場合、日常的な、自然な口調で喋る訓練を受けるため、”高低“で喋ることになり、聞く者の耳に入りやすいのだという。研究生たちは、稽古で訛りの矯正や標準語のアクセントの習得を徹底的に指導される。自身、研究所の卒業生でもある鵜澤主事はいう。「ここまで徹底的にセリフの指導をするところは、他の劇団の研究所にはないでしょう。『へえ』という返事一つを、1日かけて指導されたこともありますよ」。
写真
研修科の発表会『雨空』の稽古風景

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