特集 移行期間の課題と対策
谷合明雄

東京都新宿区立四谷中学校校長

谷合明雄

たにあい・あきお◎東京都教育委員会主任指導主事、新宿区立牛込第三中学校長等を経て現職。元全日本中学校長会生徒指導部長。学力保障・進路保障を目的に、すべての生徒の学習到達度をオールB、オール3以上とするための様々な取り組みを実践。

村松啓至

静岡県磐田市立豊田南中学校校長

村松啓至

むらまつ・ひろし◎静岡大教育学部附属浜松中学校教諭、磐田市立磐田第一中学校教頭等を経て現職。専門は理科教育と教育評価。全国教育評価調査研究会委員、人間教育研究協議会委員。学校生活のいろいろな場面で「いのち」を考えさせる教育を実践。

田中順一

前・奈良県山添村立山添中学校校長

田中順一

たなか・じゅんいち◎2009年3月に定年退職し、同年4月から奈良県の私立智辯学園奈良カレッジ講師。校長時代には、子ども・地域の実態から課題を把握し、表現力の向上を柱に学力向上、知・徳・体のバランスの取れた生徒の育成を推進。


VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【座談会】 校長が考える、移行期間中の学校づくり

生徒、地域の実態を踏まえて
4~5年先を見通した計画を

いま、中学校経営に求められる観点は何か。
小誌読者アンケートの結果を踏まえた上で、
移行期間中の課題とその対策について、現職・前職3人の校長先生にうかがった。

経営の視点は3点 人事・予算、教育課程、授業の質

――まずはアンケートの結果で気になったことをお聞かせください。
田中 私が気になったのは、校長とそれ以外の教師の、新学習指導要領に対する関心に差が見られたことです(図8)。特に、20代の若い教師の関心が低い点が気になりました。昔と比べて、ベテラン教師が若手教師を育てようとする雰囲気が薄れていることが、背景にあるのではないでしょうか。
谷合 先生方は忙しいですから、新学習指導要領を読む時間を十分に取れないこともありますね。私が最も気になったのは、校長や教頭が、教務主任には教育課程の編成など様々な業務を指示している一方で、進路指導主事や生徒指導主事にはあまり指示を出していないことです(図2)。学習指導と生徒指導は両輪ととらえるべきです。教育課程の編成ばかりに意識が偏っているとしたら問題です。
村松 確かに、授業時数の調整など教育課程をどう組むかには頭を悩ませますが、同時に授業の質の向上も忘れてはなりません。その意味で、全面実施後の変化について、校長の6割近くが「学力の定着度は変わらない」と回答している点(図10)も気になります。学習指導要領の改訂を生徒の学力を向上させる好機だと、前向きにとらえたいですね。
――そうした現状を踏まえて、校長先生が移行期間の学校経営を考える際のポイントは何でしょうか。
谷合 着眼点は「教員配置」「教育課程の仕組み」「指導内容」の三つに整理できると思います。これを、授業時数の配当や教師の確保といったハード面と、授業内容の変化や指導力向上などのソフト面の両面から考え直す。そのために、校長は、単年度ずつではなく4~5年先を見通した学校経営計画を作る必要があります。そこには「人・モノ・金」のすべてが関係します。例えば、理科の実験器具の予算は複数年度を通して手当てしないとなりません。2012(平成24)年度に英語の授業時数が一度に増えると、対応できるだけの英語の教員数がそろわないかもしれません。また、中心となる教師が他校に異動すると、学校経営に支障を来すかもしれません。これらをどう考えて対策を講じるのか――人事面、予算面で、教育委員会に何を具申するのか、あらかじめ考えて計画を立てることが校長に求められています。
田中 そのためには、3年後までの具体的な授業時数の増減や指導内容の変更点が自校に及ぼす影響を、校長自身がきちんと把握しておくことが大前提です。その上で必要な授業時数を確保し、教師が元気でいられる環境の整備に力を入れないといけません。

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