職場体験後の生徒を対象としたアンケートで最も多かった感想は、「学習の必要性に気付いた」であった。多くの生徒が「何のために学習するのか」という問いに自分なりの答えを見いだしたと言える。事業所での大人との会話も有効だと、吉田先生は説明する。
「事業所の人との会話の端々には、『今のうちしか勉強出来ないぞ』という言葉が出てきます。生徒は、家庭でも同じようなことを言われているとは思いますが、保護者でも教師でもなく、社会で働く大人から言われた言葉は説得力が違います」(吉田先生)
職場体験を始めてから、希望の進路を実現する生徒が増えている。藤森校長は、「学習の意味を理解せずに点数に追われるより、生徒自身が将来のことを考えられるように変わることが、学習意欲を高め、ひいては学力向上につながっていくのではと実感しています」と話す。
課題は、校区の小学校との連携だ。現在、校区の小学校でも職場訪問のような取り組みを行っているが、指導内容については連携出来ていない。いわゆる「中1ギャップ」に対応するための「体験授業」「体験入部」を行い、職場体験発表会に小学6年生を招待している。しかし、学習面での連続性も考えるべきではないか、と藤森校長は感じている。
もう一つは、地域との連携だ。職場体験のノウハウが蓄積されてきた今、受け入れ先は出来るだけ地元企業に依頼したいと考えている。同校は新興住宅地にあるため、もともと企業や商店が少ない上、地域とのつながりが希薄になりがちだ。地域社会の重要性を実感させるためにも、地元企業での体験を積ませたいと考えている。少しずつだが受け入れ事業所は近隣地域でも増え、可能性は見えてきている。
同校では、今後も試行錯誤を続け、キャリア教育を更に発展させていく考えだ。 |