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わかる授業、力のつく授業の創造

山形県村山市立
楯岡中学校
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III. 成果と課題
◎ 「わかる授業、力のつく授業の創造」(指導と評価の一体化を通して)のテーマを設定し、様々な取り組みを行ったが、基本的なねらいは指導案の形を整え、吟味することによって、指導者として授業を構成する上で必要な要件を提示し、研修してもらうことにより、教員の 授業力の向上をねらったものである。授業を創造するにあたって押さえなければならないこ とは解説書、国立教育政策研究所の評価資料等であり、単元や題材等としての目標を吟味し、 一時間一時間を構成することである。また、一人一人の学習者をしっかりと見取り、支援し ていくための評価基準Bを設定し、評価するための具体的な方策等を提示した。意欲的に授 業研究会を行えるように、自己申告制授業研究会を実施した。日々の実践に関しては、週案 簿の活用を考え、指導の向上を図った。
<1> 成果
・ 改訂に伴い、学習指導要領や国立教育政策研究所資料などを新たな気持ちで熟読することで、単元や題材等のまとまりを通して、四(五)観点ごとに身に付けさせたい力や望ましい 学習者の姿を明確にもてるようになった。このことで、学習のゴールを見据えた効果的な学習指導を行うことができた。
・ 単元や題材等を通した各観点ごとのゴールをもとに、単元や題材等を効果的に構成していく必要を強く感じた。そのためには、毎時間の学習課題を絞り込むことが大切である。また、課題の絞り込みにより、その学習時間における重点的な観点が見えてきた。
・ 毎時間の評価規準を検討する上で、学習者がどのような資料や思考などで自力解決していくのか、解決していく上でどんなつまずきが考えられるのかなどを予想することで、評価基準Bに値する学習者の姿が多様に想起できた。また、そのための学習者への支援策を具体的に持つことができ、学習指導にあたることができた。
・ 自己評価カード等では、授業に対する満足度が上がり、各学年ともに着実に学力の向上が諸検査の結果に表れてきた。
・ 研究授業等で養われてきた実践力が、日々の授業でも定着されてきている。その証として、週案簿への評価規準や評価基準、指導の反省を記していることである。この記録の蓄積をマトリックスに書き換え、より望ましい指導計画となってきている。
・ 習熟度別学習を実施したことで、以前の学級単位での学習と比較すると少しずつではあるが、効果があがることが諸検査結果より明らかになっている。
・ 選択教科における補充・発展学習では、学習者によるカリキュラム作成の場がとても重要である。全国的な諸検査などをもとに、自己の学習状況を振り返ることで、自己理解が深まり、自分自身の良さを知り、改善点を明確に持てるようになった。そのため、よりわかりたいとか、できるようになりたいという意識が強くなり、学習意欲が向上してきた。
・ 学習カードやテストへの取組表の活用では、評価規準の公開により、何がわかるようになればよいのか、何ができるようになればよいのかというゴールをしっかりと見据えた学習を進めていくことができた。また、単元構成の工夫等により、学習目標の絞り込みが徹底し、学習者にとって「わかった」「できた」という満足感や達成感を味わわせることがことができた。このような毎時間の積み上げにより、学習に対する意識が高まったり、指導者との信頼関係もより良いものになっている。
<2> 課題
・ 単元や題材等前における生徒の事前調査をより吟味し把握することで、より効果的な単元構成ができ、学習者一人一人に確かな学力を保障することができるだろう。また、事前調査は、各観点ごとに把握したい。
・ 作成したマトリックスをもとに、学習展開を行った際、その学習指導を反省し、その気づきを週案簿に記録する習慣化を図るとともに、実施状況よりマトリックスの内容を修正や蓄積を行っていく必要がある。
・ 多様な学習者の姿を想定した実践を積み上げていくためには、学習指導要領などの土台となる資料をしっかりと読みこなすことや教材研究の充実が不可欠である。日々の自己研修を大切にしていく必要がある。
・ 習熟度別学習においては、少人数制をどのように行うべきかを検討する余地がある。学習者一人一人がどのコースを選択していくのかをしっかりと見定めていけるような手だてが必要である。そのためには、学習者の自己理解の深ま方や指導者の単元構成、教材開発をより研究すべきである。
・ 選択教科の補充・発展学習においては、学習者一人一人のカリキュラム作成の場での見取りや支援の充実が必要である。カリキュラム作成そのものが学びの場であり、より具体的で焦点化したものを作成できるようにしていきたいものだ。また、学習者一人一人の学びの場においては、一時間一時間が個々にとって有効な時間であるように支援できるような方策を考えていきたい。
・ 現在、学力向上フロンティア事業を受け、『自分を知り、意欲を持って学び続ける生徒の育成』を研究テーマに掲げ、研究を進めている。自己評価能力の育成や学習意欲に関することがキーワードとなる。上記にその一端を紹介したが、まだまだ研究の余地があり、さらなる研究や実践が必要である。
 
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