山形県村山市立
楯岡中学校
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2. 習熟度別学習の進め方とその現状
現在、本校では数学科と英語科において習熟度別学習を進めている。どちらの教科も2クラスを3コースに編成し、確かな学力の定着や個々の学力の伸長に努めている。数学科の進め方を例に実践を紹介したい。
(1) 習熟度別学習の進め方
現在習熟度別学習は全国的な広がりを見せている。学習者全員に確かな学力を保障していくためには、どのような仕組みが効果的であるかを考える必要がある。また、学習者の実態も十分に考慮すべきである。しかし、少人数制にすることで、必ず学習者一人一人の学力が向上していくとは限らない。どのようなシステムがより望ましいのかを考えている。数学科の進め方と各教科の学習効果について、下記に述べる。
○ 単元の目標は、習熟度別のコースに関わらず共通とする。
○ 数学科や英語科における習熟度学習では、2クラスを3コースに編成し、少人数制での授業を展開している。
例)数学科
「原学級」「習熟度別学習」「コース別選択学習」を、学習内容に応じて実施していく。
HOPコース…基礎・基本を重視した学習を展開する。T・T指導
STEPコース…これまでの原学級の学習展開で学習展開する。
JUMPコース…基礎・基本をコンパクトにまとめ、応用的な学習内容を取り扱う。
・ 英語科においても、数学科と基本的なシステムは同様である。
(2) 習熟度別学習の現状と課題
習熟度別学習を実施し、今年度2年目になる。
(数学) ◎ … 全体調査結果より優れていた内容 ● … 全体よりやや劣っていた内容
関心・意欲・態度
◎ 与えられた条件から理論立てて結論を証明することは、おもしろい。
◎ 数学で学習した内容を、日常生活で用いている。
● 複雑な計算をする時、文字を用いて簡単にする方法ができないかを考えてみる。
学習方法の実践
◎ 数学の問題が解けた時、別の解き方がないか考えるようにしている。
◎ わからない問題や、テストで間違えた問題は、繰り返し練習して間違わないようにしている。
(英語) ◎ … 全国調査結果より優れていた内容
関心・意欲・態度
◎ 英語の話が理解できない時には、聞き返そうとしている。
◎学んできた単語を積極的に使って、英語で話そうとする。
◎ 教科書以外にも英語の文章を読んでみたいと思っている。
これらの結果やその他の詳細な結果を分析してみると、次のような点があげられる。
学習者に習熟度別コースを選択する場を設定したことで、その教科における学びを振り返り、自己理解を行ったり、深めたりすることができた。このことで、自分の学習状況をつかみ、より高い目標をめざし学習していくようになった。
習熟度別学習のオリエンテーションを受け、学習進度や方法等に関する情報を得て、自己決定を行う場を設定した。自ら進んで学習していく姿勢が生まれ、主体的に学習を行えるようになった。
習熟度別学習を展開したことで、学級の枠を超えた学習集団が生まれ、学習者は新鮮な気持ちで学習を進めている。また、座席決定においても共感的人間関係を十分に配慮するなどしていることで、気軽に教え合い学習が進められている。
生徒指導面においても、学習者自身の存在感、そして人間関係等が整備され、徐々に成績向上につながっている。
教え合い学習が成立している反面、解決場面での練り合いの場において、深まりや広がりの点に不十分さを感じている。
習熟度別のコースにおいて、各コースの教材開発の点において、まだまだ研修不足である。どのコースにどんな教材が適するのかを今後研究していく必要性があるだろう。
3. 自己理解や学習意欲等に関わる実践例
本校では、学力向上フロンティアスクール事業を進めていくにあたり、『自分を知り、意欲を持って学び続ける生徒の育成』を研究テーマに掲げ、来年度初秋に本発表を実施する予定である。このテーマには、自己評価能力や学習意欲に関するキーワードがあげられる。学力を向上させるためには、指導者の指導力の向上の他に、学習者の情意面に関することも重要である。そこで、補充・発展型選択教科のあり方と教科指導における学習カードや単元テストの取り組み表の例を紹介したい。
(1) 補充・発展型の選択教科
本校では、文部科学省の選択教科の趣旨をふまえ、選択教科を「課題学習」と「発展・補充学習」の2種類の柱で構成している。「課題学習」は、指導者が大テーマを学習者に提示する。その後、全体オリエンテーション時に、学習者はどの大テーマを解決したいのかを選択し、学習が進められる。昨年度の主な大テーマは、次のようなものである。
(例)社会科…最上徳内の紙芝居をつくろう!
技術・家庭科(技術分野)…卒業CDアルバムをつくろう!
保健体育科…オリジナル徳内おどりを創作しよう!
「補充・発展学習」について、おおまかな学習の流れは下記のようになる。
1. 全体ガイダンス
○ 選択教科のねらい
○ 補充・発展型の選択教科について
○ 教科の選択にあたって
○ 質疑・応答
2. 自己理解(教科選択)のための時間
○ 全国的な諸検査結果や学習に関する意識等の調査結果、教科書等を参考に、自分の学習や学力を把握する。(自己理解と学習への意欲づけ)
○ 得意(好き)な教科を選択し、発展的に取り組む分野や補充したい分野を決定する。
3. 教科ごとに指導者と相談し、学習者自身が学習カリキュラムを作成
※ 指導者は教科の特性、学習が困難な分野、学習方法などの説明や講話をする。
※ 具体的な学習方法を提示する。(概念地図法など)
※ 開設講座の計画を提示する。
※ 無理なく、能力に合った学習カリキュラムを相談しながら、話し合いながら。
4. 学習者は、学習カリキュラムに従って、学習
※ 学習者は、毎時間、自己評価し、カリキュラムの修正や補充を検討する。
※ 個人学習(学習カリキュラム)と指導者による講座制(定期的)の2本柱で。
※ 途中に、中間発表会を設定する。
※ 学習内容によっては、外部人材に活用していく。
※ 最後には、発表会を設ける。
(2) 学習カードやテスト取り組み表の活用
<1> 学習カード (中学3年理科 物理分野「運動とエネルギー」)
<2> 単元テスト取り組み表 (中学3年理科 物理分野「運動とエネルギー」)
○ 学習カードやテスト取り組み表を活用して
単元を見通すことができるように学習カードを提示することで、学習者一人一人が学習進度を確認していくことができた。また、単元末における単元テストがいつ実施されるかも 把握できた。
学習カードの記入を継続していくことで、短時間に記入を終え提出できるようにまで至っている。学習の振り返りは記述しているが、学習のポイントがずれていないか、何を努力できたのか、疑問に思ったことなど自由に書かせている。毎時間40名全員を見取ることができないので、カードを通して、学習者全員とのコミュニケーション活動を進めている。次時までに指導者が目を通し、一人一人のカードにコメントを書く。学習者は、授業前にカードが配布されると、どんなコメントがあるのかを楽しみしていることが伺える。
学習カードに記入されている内容をもとに、不安な点は導入で確認したり、疑問を取り上げたりして、授業改善を進めていくことができる。カードを記入により、自分の書いた内容が取り上げられる喜びを味わっている生徒が多い。そのため、学習意欲も向上している。
小単元ごとのまとまりを示し、最後に主な評価規準を公開している。このことで、学習は、何がわかるようになればよいのか、何ができるようになればよいのかがわかり、よりわかろうとしたり、できるようになりたいとする学習姿勢が向上してきている。
単元テスト取り組み表では、特に知識・理解に関する学習内容をチェックリストとし示すことで、学習者は学習のポイントを確実に把握しようとする。その結果、好成績を維持するに至っている。
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