ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
わかる授業、力のつく授業の創造

山形県村山市立
楯岡中学校
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II . 研究内容と主な実践例
1. 指導力の向上を図るため
 以前の相対評価の時代では、学習者の評定判断は、指導者の力量とはほとんど関係なく、他の学習者との違いや集団の中での位置づけに重点がおかれて行われ、評定できるものであった。
 現在、目標に準拠した評価に完全移行したことで、学習者が獲得した学力はどの程度なのか、指導者はどれくらい学習者の学力を向上させることができたのか等、指導者の力量が明確に問われる時代になったわけである。指導者としての意識改革と指導力の向上が重要であるととらえ、研究を実践中である。
(1) 内容のまとまりの重視と構成の工夫
 内容のまとまり(単元や題材等)をどのように構成するのかをしっかりととらえ、授業構成を行っていく。内容のまとまり、すなわち指導計画と評価に関する資料を、本校では「マトリックス」と呼び、下記のような約束を設け、作成し、授業実践を行っている。その際、学習指導要領や国立教育政策研究所最終報告を熟読したり、学習者に内容のまとまりに関わる調査(レディネステスト)を行い、分析し、単元を構成している。学習指導案の様式は、最後の資料を参照。
<2> マトリックスの特徴
○ 「基礎・基本の確実な定着」のために、単元としての目標を吟味し、再度、構成を考えることにより、一時間一時間の目標がしぼられること。(観点の重点化)
○ 重点化した観点を受け評価規準を文章化し、その評価方法を記載していること。
○ その時間の評価規準を受け、どんな学習者の姿が評価基準Bなのかを想起し、文章化していること。
 ※多様な学習者の姿を想起しているために、複数記載されている。これを「評価基準Bの立体化」と名付けている。
 ※評価基準の設定にあたり、その条件や程度などを示し、より具体化していること。
○ 単元や題材などを通した評価方法やその内容を明示していること。
<3> マトリックスを用いた実践を通して
○ 単元や題材等を通して、学習者にどんな力を身につけさせたいかを明確に持つことができ、学習指導を継続することができた。
○ 課題をどのようにつかませ、学習者がどのように解決していくかを想起することで、どんな条件で、どの程度達成すれば基準Bとするのかを具体的に考えることができた。また、基準Bの姿に到達させるために、どのような支援が必要なのかという点においても、より具体的に立案でき、実行できた。
○ 毎時間における評価基準Bに値する多様な学習者の姿のうち、どの条件かを満たしていれば良いとした。この見取りと支援の積み上げが、学習者一人一人の学力を確かなものとしていくことができた。また、見取りや支援が十分できるように、自力解決の場を十分に設定することにも留意することができた。
○ 単元や題材等に入る前に、学習指導要領や国立教育政策研究所最終報告書を熟読し、学習内容を分析することが大切である。
(2) 評価基準Bの立体化

<1> 評価基準Bの立体化の考え方
○ 3段階であることは、天井や底がないことをイメー ジしている。そのため、評価基準Bに到達している学習者の姿を吟味することで、評価基準AやCが見えることとなる。本校が評価基準Bを吟味している理由はこの点からである。図で表せば、右のようになる。
<2> 評価基準の立体化による主なメリット
○ 多様な学習者の姿を想起することにより、学習者の立場になって、学習目標や課題などを検討することができる。
○ 担当している学習者全員が評価基準Bの姿に到達することを考えた場合、そのつまずきが予想され、そのための解消法(支援策)が具体的に準備される。
(3) 具体的な方策例
<1> 授業研究会の実施と工夫
 本校では、「校内授業研究会」と「自己申告制授業研究会」の2種類の授業研究会を実施している。どちらの授業研究会にしても、事前に教科部会による学習指導案の検討、そして事後研究会を行っている。事後研究会では、教科の枠を超えて、毎回熱心な話し合いが繰り広げられている。また、他校の先生方が参会することも多く、事後研究会でも共に勉強会を進めている。
 自己申告制授業研究を実施し、3年目になった。定期的な授業研究会では、各教科の年間指導計画上、毎年同じ単元や題材があたりがちである。自己申告制授業研究会を行ったことで、「今まであまり挑戦できなかった単元の学習指導案が作成でき、財産が増えた」「生徒の弱点の内容をもとに、授業研究会ができた」「校内に○○科が1人しかいないので、他校から専門の先生をお呼びして、助言していただきうれしかった」などの声があり、指導力向上の一助となっていると考える。
<2> 指導法強化週間
 指導法教科週間は、学期に1回設定している。その期間は観点を決めて、学習指導を互いに参観し合い、基本的な指導力の向上に努めている。
<3> 週案簿の活用
 本校独自の学習指導に関する記録簿を利用している。指導学級、本時の評価規準とその観点や評価方法、指導の反省などを日々記録している。様式や記録状況は下記のようになっている。
 
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