VIEW21 2000.9  新課程への助走
 2003年 新課程カリキュラム作成を考える

SIの設定がカリキュラム作成の第一歩となる

 冒頭で述べたように、'03年度カリキュラムの検討状況としては、素案がいくつか作成されているものの、学校全体での討議までには至っていない学校が多い。
 大学入試改革の状況が具体的に見えてこないことや、県からの総単位数に関する制限の指針が出されていないことなど、具体的な検討に着手するためには、まだ不確定要素が多いという声もある。しかし、SI=学校ビジョンや「総合的な学習の時間」は、検討の第一歩として多くの学校で進められているようである。
 下表は、追跡調査した学校のうち、大学進学の実績を上げている10校についての検討状況を取り上げている。進行状況は学校によって様々である。ただ、問題意識としては、(1)授業時間の教科配分、(2)「総合的な学習の時間」の内容、(3)SI、の3点に集約されるようだ。各学校とも、このいずれかからカリキュラム作成の検討を始めていることが分かる。

'03年度新課程カリキュラム作成の検討状況('00年5月)
(1)カリキュラム作成状況 (2)総合的な学習の時間 (3)教科「情報」
高 校 現 状 問題意識・課題
A 高校
普通科進学校
(1)'01年度カリキュラムを検討中。'02、'03年度はいくつか素案を作成
(2)検討中。'01年度より実施予定
(3)未検討
(1)私立高校への生徒流出もあり、生徒の学力が変わってきている。進学実績の保証を最優先とし、教科指導の時間は最大限確保したい。
B 高校
普通科進学校
(1)'02、'03年度のカリキュラム案作成済(教務原案)
(2)検討中 (3)未検討
教務案が作成され、これから検討に入る状態。取り急ぎ'02年度の検討を行う。
(1)当面の課題は各教科への時間配当。ただし、今回の新学習指導要領の下では、生徒が自ら考えることを中心に据えて考えることが必要である。今後の検討は総合的な学習の時間が議論の中核になる。
C 高校
普通科進学校
(1)'02、'03年度カリキュラム案作成済。教育課程委員会にて検討中
(2)未検討 (3)未検討
*文武両道を校訓とすることから、保健体育・芸術・家庭においても相当の単位配分を予定。
(1)完全週5日制及び新課程を実施した場合にも、授業内容をできるだけ落とさないようにしたい。医学部進学希望者が多いため、医学部理科3科目入試への対応は不可欠。
D 高校
普通科進学校
(1)'02年度のカリキュラムの教務原案を作成済。'03年度は手付かず
(2)2つのプランを検討中 (3)未検討
*「総合的な学習の時間」を含めた'02年度カリキュラム作成が現在の課題であり、校内では6月の中旬に決定する。
(1)週28単位で授業が実際に収まるか疑問。試案として60分授業も検討中。
(2)総合的な学習の時間に何を行うか。プランは試案なので、'02年実施を目指し、今後詳細を検討する。
E高校
普通科進学校
(1)'02年度を教育課程委員会にて検討中。'03年度は未検討。
(2)'00年度より実施 (3)未検討
*県の調査研究協力校であり、総合的な学習の時間を早期実施。
(1)'03年度カリキュラム作成予定はない。
(2)今年度の最大課題。進路学習とボランティア活動を中心に進めているが、思い切って進学色を消し、「生きる力」の育成を第一にした内容にしようかと考えている。
F 高校
普通科進学校
(1)'02年度までは作成済。'03年度は今年度いっぱいかかる見込み。
(2)検討中 (3)未検討
*4つの検討委員会(行事・部活・進路指導・総合的な学習の時間)で検討を進める。
(1)新学習指導要領は完全週5日制を含むため、単なる編成表上の数字合わせであってはならない。よって、自校としてのあるべき姿を探り、生徒にとって一歩前進となる教育課程とするためには、生徒と保護者、教師の問題意識を相互に認識する必要があると考え、全生徒・保護者・教師に対するアンケートを実施した。
G 高校
普通科進学校
(1)'02年度をこの6月より検討開始
(2)未検討 (3)未検討
(1)以前にSIを学校で検討しており、これを基に新課程編成の考え方を導き出した。
H 高校
新学科設立
(1)'02、'03年度共に作成済
(2)検討中  (3)未検討
*国際教育をリードする高校として、国際科を新設。設立に当たり、'03年度以降のカリキュラムを作成。
(1)国際教育をリードする高校としてのSIを、国際科だけでなく普通科にも及ぶ形で検討を進める。具体的には生徒の主体的な学習を促すために、選択の弾力化を大幅に図っていく。
I 高校
市立高校
普通科進学校
(1)'02年度はカリキュラム委員会にて検討済。'03年度カリキュラムを検討中
(2)検討開始(本年度より)
(3)開講科目は仮決定。具体的な内容は教科書が出てから検討
*本年度は「総合的な学習の時間」の検討に全力を注ぐ。
(1)教科の配当時間の調整が課題。
(2)自校の特色は何か。普通科進学校としての、さらに市立高校としての特質を踏まえ検討した。
J 高校
総合学科
普通科を母体とする進学主体の高校
(1)'05年度までを教育課程委員会にて検討済
(2)検討中
(3)現在、専門教科として「情報基礎」を開講
*カリキュラム自体は今後も調整していくが、検討はほぼ終了。今後は「総合的な学習の時間」などの具体的な教科内容を検討する。
(1)総合学科には講座数が多いことと、2・3学年合同講座も多いことから、新旧両課程のスムーズな移行を進める必要性を感じていた。総合学科とは言え、母体は普通科であるため進学への保証を意識。国語、数学、英語の単位配当には留意した。
(2)既存の「産業社会と人間」と「総合的な学習の時間」・「情報」の融合に重きを置く。

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