その試みの一つが、
'99年から始めた「小論文コンクール」だ。夏休みの課題として図書課より課題として出される「読書感想文」か「小論文」のどちらかを選択して、夏休み明けに提出する。3年生は任意だが、1、2年生は全員提出が義務付けられている。優秀な作品は全校生徒の前で表彰し、図書券が贈られる。また、各種団体が開催する全国レベルのコンクールに出品される。
'99年度コンクールの小論文テーマは「国際交流について」。曽根先生は1、2年生の半分は小論文を選択するだろうと予想したが、両学年合わせて30名ほどにとどまった。また、1年生の作品は、小論文の体裁をなしていないものが多かった。1200字のマス目は、自分の感想をだらだらと羅列したもの、どこかで聞いたような意見にしか見えないもの、何かの本を書き写したようなもので埋められていた。
「生徒に基礎的な小論文の指導をせずに、コンクールを実施したことは失敗でした。しかし、この結果を受けて、低学年からの小論文対策の必要性を改めて痛感したのです」(曽根先生)
後藤先生は、現在担当の3年生が1年生だったときから生徒に新聞・雑誌の切り抜きをコピーして配り、時事問題について関心を持つように指導してきた。2年生のときには国語だけでなく公民の定期試験に小論文形式の問題を出題してもらったり、担任の先生の協力を得て、課題学習として3学期に4回、小論文を書かせる試みをしている。
現在、1学年担当の曽根先生も、後藤先生と同様の試みを行っている。
「私自身、新聞や雑誌の他、ホームページなどをこまめに検索して、世の中の動きをチェックしています。生徒に是非知っておいてほしい記事は生徒に資料を配布して、時事問題にアンテナを張るように指導しています。新聞記事のスクラップといった情報収集は、3年生になってから始めても、あまり意味がありません。知識は積み重ねることで厚みが出てくるからです。スクラップブックに興味のある記事を貼り、自分の意見を書き込む。そんな訓練を、低学年のうちからLHRなどの時間を使ってでも、やるべきだと思うのです」(曽根先生)
確かに、生徒はもちろん先生も時代に敏感にならないと小論文の出題の多様化に追いつくことはできない。
「小論文の指導を通して、生徒に受験だけではなく、生涯を通じて活きる力を身に付けていってほしいと思っています。しかし、先生も生徒も、目の前にある教科学習に目が向きがちです。受験だけに向けられている視線をもっと先の、生徒の将来を見据えるようにするのが、委員長の一番大切で、一番大変な仕事です」(後藤先生)
時代をビビッドに感じる豊かな感性と知識、それを的確に表現する力を磨く―、それは人間としてのステップアップにもつながる大切な「勉強」なのではないだろうか。米沢興譲館高校の取り組みは、今、新たな方向へと歩み始めている。
個別指導を受ける生徒に配布する『現代を考える』のテキストと原稿用紙。問題には文章だけの課題文だけでなく、グラフや表を使った課題も含まれている。
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