VIEW21 2000.9  特集 危ぶまれる生徒の学力

★学力向上のための取り組み例★
事例1:進路指導が生徒の学習意欲を伸ばす

「オンリーワン事業」で目的意識の高い生徒を増やす
佐賀県立小城高校

佐賀県立小城高校
設立1899年。今年で101周年。普通科の共学高校。全校生徒953名。'00年度入試では、大阪大2名、熊本大5名、佐賀大37名をはじめ、国公立大に87名が合格。私立大は西南学院大、福岡大をはじめ275名の合格者を輩出。部活動は、柔道部、剣道部、ソフトテニス部などが九州大会の出場経験を持つ。


 将来の目標や社会的な興味・関心を持っている生徒は、学習意欲も旺盛である。これは多くの教師が、実感としてつかみ取っていることだ。つまり進路指導を充実させることは、生徒の学力面でのアップにもつながっていく。その一つの例として、佐賀県立小城高校の実践が挙げられる。
 小城高校ではここ数年、生徒の学力低下が一つの課題となっていた。同校の森宏二郎先生は次のように話す。
 「私の担当は国語ですが、当然知っているであろうと思う常識的なことが身に付いていない生徒が目立ちます。例えば3年生に『黄昏(たそがれ)はいつの時間帯か』と聞いたのですが、そもそも黄昏という言葉自体を知らないんですね」
 もう一つ、同校を取り巻く環境にも変化が起きていた。同校は小城・多久地区では唯一の普通科高校で、かつては地元の生徒の多くが同校に進学していた。だが学区制の改正と共に、近年は上位層の生徒が佐賀市内の高校に進学するケースが増えてきた。同校はその点からも危機感を強めていたという。
 そんな中、同校が'96年度からスタートさせたのが「オンリーワン事業」だ。これは、「このことだけは誰にも負けない」「これだけは持続的に取り組もう」という身近なテーマを設定し、「かけがえのない、たった一人の自分」を探り当て、磨き上げるために、1年次に職場訪問、2年次に課題研究を行うというもの。もちろん進路観や学問に対する興味の養成を主目的としており、学習意欲の向上は副次的な狙いにすぎない。だがこの行事をきっかけに目標をしっかりと持ち、学習に対しても意欲的な姿勢を見せるようになった生徒も少なくないという。
 「今春、本校の国公立大合格者は過去最高になりました。『オンリーワン事業』の試みが、プラスに働いてきたのだと思います」
 井上正三先生もこのように語る。


写真 森宏二郎 写真 陣内慶周 写真 井上正三
佐賀県立小城高校教諭
森宏二郎
Mori Koujirou
教職歴23年。国語科担当。進路指導部主任。「全体のまとまりと各生徒への心配り、両方大切にしたい」
佐賀県立小城高校教諭
陣内慶周
Zinnouchi Yoshikane
教職歴24年。世界史担当。研修部主任。「オンリーワン事業の質をさらに高めていきたいですね」
佐賀県立小城高校教諭
井上正三
Inoue Syouzou
教職歴16年。数学科担当。1学年主任。「生徒には、それぞれ満足できる進路を歩んでほしい」

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