中でも、一番工夫したのは、成績下位層を作らないための指導だ。 「課題を忘れた生徒は放課後に残して指導したり、テスト後は「テストノート」という復習ノートを作らせるなどして、知識の定着を図っています。生徒がしつこいと思うくらい、何度もフォローしています」(鈴木先生)
「テストノート」は、定期テストや模試で不正解だった問題をもう一度やり直す復習ノートだ。不正解だった問題をノートに貼り、どこで間違えたのかを調べ、その過程で分かった関連事項も書き込んで提出する。教師は重要事項などコメントを書き込んで生徒に返却している。
また、週1回の単語テストは20点満点中16点未満の生徒は再テストを行う。定期テスト前には下位層の生徒を集めて補習をしたり、1年次春休みの課外は習熟度別にクラス編成し、上位層には応用問題と読解を指導する一方で、下位層には徹底的に文法の復習を行ったのだ。
「テストノート」は校内テスト用と模試用の2冊用意。間違えた問題のコピーを貼り、もう一度解答した上で、構文や訳など、調べたことを書き込む。得点が8割未満だった生徒のみが作成して、提出する。
『英コミテスト』で動機付けを演出
指導の工夫の一環として、学習の動機付けに利用しているのは、『英語コミュニケーション能力テスト』だ。このテストは、リーディング、リスニング、ライティングの3技能を測る問題を課し、総合的な英語力を評価するテストだ。習熟度に応じて得点を示す「スコア制」となっている。
盛岡第三高校では、実施後、独自に作った「成績自己分析シート」を配布。生徒に自己の成績を記入させ、結果を振り返らせている。
「シートには入試や留学に必要な英語力、社会で求められている英語力を、このテストでの得点に換算して示しました。生徒は、偏差値とは違う角度から自分の英語力を見つめることができたようです。シートに来年の目標を書き込む生徒もいました」(小澤先生)
また、各技能別に前回との得点を比較できるため、教師は生徒の伸びを把握しやすく、指導の成果を確認できるようになったと言う。
こうした取り組みの結果、約7割の生徒が1年次のうちに英検で準2級を取得。また、進研模試における東北地区上位15校との比較でも、過去数年間の英語はその平均を下回っていたが、昨年11月以降、プラスで推移している。
今後の課題は、インプットした知識を「話す」「書く」とアウトプットできる回路を作っていくことだ。今年度は文法・構文を使って英作文が書けることと基本的な読解を、来年3年次では個別試験対策の読解と自由英作文の力を付けることを目標としている。
「1学期は日本語を英語に訳す英作文を出しましたが、2学期以降、何かテーマを与えて、自分の考えを自由に英文で表現する形にしようと考えています」(小澤先生)
コミュニケーション能力と文法力の指導を並行して進めながら、目標に向かって着実に歩み続けている盛岡第三高校。同校の取り組みが本当に花開くのはこれからだろう。
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小澤利博
教職歴8年目。同校に赴任して3年目。英語科担当。第2学年担任。「やるからには中途半端にせず、トコトンやろう、をモットーに指導しています」
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鈴木耕二郎
教職歴28年目。同校に赴任して2年目。英語科担当。第2学年主任。「生徒が進路希望を達成して楽しい気分で卒業できるようバックアップしていきたいですね」
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岩手県立盛岡第三高校
1963年創立。共学の普通科高校。全校生徒数は1020名。'00年度入試では岩手大71名、東北大18名など、国公立大に216名合格。私立大は東北学院大14名、早稲田大6名など、計182名合格。'00年度インターハイには新体操部や陸上部などが出場。文武両道をモットーとする。
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