担当部署主導のシステムにして担任の負荷を減らす
「総合学習」への教師の不安の声の一つに「担任に負荷がかかるのでは?」ということがある。長崎東高校で言えば「社会を知る」学習を行うための資料集めなどの準備に労力と時間がかかりそうだ。しかし、吉田先生は「それほど負荷はかからない」と言う。
「本校では、これまでの低学年からの小論文指導をしてきてノウハウは蓄積されています。何を準備し、生徒にどんな資料を与え、どういう手順で指導するか一通り分かっているから、『総合学習』でもそんなに手間はかからないと思います。初めて本格的に小論文に取り組む高校の場合でも、今は参考となる書籍がたくさん出ています。インターネットを使えば、資料集めもそれほど大変ではないはずです」
長崎東高校では「社会を知る」取り組みで、これまでに配布した資料や生徒が相互評価に使った用紙などをファイルにして保管している。年月がたち資料が古くなった場合などは進路指導部がチェックして「この時期にこの資料に差し替えてください」と担任にお願いする。効率的に更新し、常に厳選された資料を高校ぐるみでストックしておくことで、担任個々の資料集めの負担もかなり軽減されているようだ。
長崎東高校では進路指導で既に行われていたが、「総合学習」の運営に当たっても、担当者なり担当部署をまず作って、その主導の下に各担任が生徒を指導するシステムを作ることが必要、と吉田先生は指摘する。指導案もそこで作成して学年会、担任会などで「次の週はこれに取り組みます」ときちんと提示すれば、学年の共通理解も得られるし、担任の負担も減る。
「『総合学習』での教師の不安は、どういうやり方をしていいかわからないという点にもあります。担当部署から、いつ何をして、資料は何を揃えて、返ってきたレポートや小論文をどう処理するかの流れを示し、具体的な取り組み方を確立させれば、担任に負荷はそれほどかかりません。必要な資料を担当部署で用意してもいいでしょう」
各テーマにかける時間数については、吉田先生は2週間で一つを終わらせることを考えている。時間内で終わらせるには、例えばLHRとつなげて2時間連続のコマを作って、1週目にテーマ研究、2週目は最初の1時間で書き上げて、2時間目で生徒同士の相互評価まで行う方法が考えられる。
「2週間で4時間あれば、一つのテーマについてある程度突っ込んだ学習が可能です。こうしてシラバスのテーマをこなしていけば、年間30時間なんてあっという間に終わりますよ」
生徒が書き上げた成果物に対しては、優秀作品を選んで発表するだけでなく、冊子にする、さらにインターネット上のホームページに掲載するなど、さまざまな方法を考えていると言う。こうした生徒の目にも見える形での動機付けは、生徒自身の学習への意欲を高めることにつながるだろう。
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