VIEW21 2000.10  創造する 総合的な学習の時間

現在の取り組みを
「総合的な学習の時間」へどう発展させるか

“社会の中での自己”をつかませる指導を重視

 長崎東高校では、「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)において、低学年からの小論文学習と進路学習を、LHRや教科学習、学校行事とリンクさせながら行うことを想定している。
 「多くの高校でも同じことが言えるでしょうが、今までの活動の中に『総合学習』に活用できるものがかなりあるんです。それをベースに、よりよいものに有機的に発展させていくべきでしょう。進路学習での一番の問題は時間が足りないことでしたが、『総合学習』を活用すれば、従来は時間がなくてやむを得ず切ってきた取り組みも行えます。時間をかけて、いくらでも中味を濃くすることができるのです」
 「総合学習」における小論文学習、特に従来、多くの高校で行われてきた受験小論文については「低学年から必要なのか」「入試で必要のない生徒に対して動機付けが難しい」などの理由で、そのまま「総合学習」に移行させることに疑問を感じている教師が多い。吉田先生は、そのために、低学年からの小論文学習と受験対策としての小論文学習をいったん切り離して考えることが重要、と指摘する。
 「結果的には両者はつながるかも知れませんが、指導する側の意識は入試対策ではなく、あくまで『生きる力』を育てるための指導だと考えるべきでしょう。生徒が将来の夢を持ち、その実現に向けて進む力を獲得するための取り組みであり、小論文のテクニックだけを養うための指導ではありません。入試科目に小論文がどんどん入ってきているから小論文指導を、という考えではすべての教師には受け入れられないし、結局長続きしないと思います」

従来の進路学習に捕らわれすぎず、柔軟な発想で

 では、長崎東高校ではどんな取り組みを想定しているのか。吉田先生作成のシラバス草案を見てみる。
 大きな変化の一つは、現在の進路学習では主に1年次で行っていた「知る」ための学習、特に「社会を知る」学習が、1年次、2年次の両学年において重視されていることだ。
 「今の生徒はかなり子どもっぽいですよね。社会のことに関心が乏しいのか、新聞もあまり読まないようです。そのため身の回りのことに対する自分なりの意見も持ちづらい。だから、まず社会に目を向けさせることが大切です。そうすれば社会の中でどういう役割を果たしたいかという自分の望むポジション、目標も見えてきます。そんな意図で、1年次ではいろいろな事象を広く浅く学び、2年次でそれをもっと深める学習を想定しています」
 進路学習の基本的な考え方として、1年次は自己理解、職業研究、2年次は大学・学部・学科研究という流れがあるが、吉田先生は必ずしもそれに縛られる必要はない、と考えている。
 「私個人の意見ですが、大学・学部・学科研究は1年間丸ごと使わなくてもできるのではないでしょうか。一方、今の生徒は3年生になっても、自分の興味・関心がどこにあるのか分からないことが少なくありません。2年次、3年次でも『社会を知る』などの取り組みをスパイラルに繰り返して行う理由もそこにあります。いつでも社会を覗ける窓を確保しておいてあげることが今の生徒には必要だと思います」
 そうした「社会を知る」取り組みと大学・学部・学科研究をどう密接にリンクさせるかを今後考えていきたいと、吉田先生は考えている。
 そして「社会を知る」「大学を知る」など、様々な取り組みの中で折に触れて書かせることで小論文学習や課題研究と結び付ける。教室の中の座学だけでなく、社会見学、講演会などにおいても感想文、レポートを提出させる。この部分については、現在の取り組みと基本的な考え方は変わらない。


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