ALTと生徒が1対1でテスト
「実際に生徒が行動するので授業は盛り上がりますし、私たちも黙々と板書し、説明するより楽しい」というプロジェクト。だが、仕掛けが大がかりな分だけ、事前準備が重要であり、教師の負担は増える。また、生徒主体の活動のため、クラスによって生徒の反応は異なり、成果のレベルも差が広がりやすい。それらの課題に対応するために、富高先生はOC・Aを導入した初年度に、授業の内容や手順を1冊のマニュアルと60分程度のビデオにまとめた。現在でも適宜改訂を加えながら使っている。
「担当教師が異なっても授業を一定のレベルに保つことができ、また転任されてきた教師やALTへもスムーズに引き継ぎができます。生徒にとっても、ビデオで先輩たちの活動を見ることで、自分たちが何をすればいいのか、容易にイメージできるようです」
人数が多いため、評価を下すのも大変だ。同校ではOC・Aのペーパーテストをせず、授業点や各プロジェクトなどを総合して評定値を出す。1、2学期のプロジェクトは一度に複数の生徒を評価できる。しかし、3学期の個人インタビューは、約330名の生徒一人ひとりを、ALTが一人でインタビューするため、授業中だけでは終わらず、放課後数日がかりで行っている。
「JTEも評価に加わるかどうか事前に話し合いました。しかし、JTEと生徒では英語を話す真の意味が薄れてしまう。ネイティブと1対1の状況を作り、その中でインタビューを受ける意義が大きいと判断して、ALTに頑張ってもらいました」
英作文に自己表現を取り入れる
教師が大変でも、生徒に学習させたいことは妥協しない。そんな思いが伝わってか、年度末のアンケートでは「OCは楽しかった」と答えた生徒は58%、「英語への関心は高まった」と答えた生徒は35%。「何度も辞書を引いて調べるのは大変だったけど、ALTに自分の英語が通じたときは本当にうれしかった」(山本沙織さん)と、授業は生徒に好評だ。2年次になるとOCがないことを残念がる声もよく聞かれるという。
これからの課題は、OCがなく、大学入試への対策が色濃くなる2、3年次に、生徒に芽生えた英語への関心をどこまで引っ張っていけるかだ。英語は使わなければ忘れてしまう。富高先生自身、継続の重要性を実感している。
「学年は持ち上がりのため、教師もOC・Aを担当するのはほぼ3年に1回です。2、3学年を教えた後、1学年に戻ってくると、英語がひょいと口をつかない自分に気が付くんです」
富高先生はOC・Aのように自分の意見を表現する活動をさせたいと考え、担当する2学年のライティングにエッセイや地元民話の英訳を独自に取り入れた。大学入試でも「英語コミュニケーション能力テスト」に出題されているような、自分の意見を述べさせる英作文が増えている点にも着目した上での取り組みだ。この「英語コミュニケーション能力テスト」について、富高先生は「現在、そしてこれからの英語指導の方針・方向性とマッチしている」と語る。
「これからはインターネットで海外の人とも気軽にコミュニケーションできる、電子メールの時代です。短い文章でもサッと英語で書ける、相手の英文を読んで意図を理解する力がもっともっと重要になるでしょう」
受験のためだけではなく、英語を人とコミュニケーションしていく知恵として身に付けてほしいと話す富高先生。
「一人でも多くの生徒が英語に興味を持って、何か将来へつないでいけるよう、工夫を重ねて、新しい授業を作っていきたいですね」
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富高啓順
教職歴15年目。同校に赴任して7年目。第2学年クラス担任、英語担当。「『知的に好奇心が刺激され、それでいて力が付く』。そんな授業を目指しています」
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宮崎県立延岡高校
1899年創立。共学の普通科高校。各学年2クラスある理数コースを含め、全校生徒数は938名。'00年度入試では、東京大、京都大をはじめ、九州大6名、宮崎大10名など国公立大に合計141名が合格。私立大にも171名の合格者を輩出。「剛健・自治・信愛」の校訓の下、学校行事や部活動、ボランティア活動にも力を入れる。
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