「情報」の授業では学習の仕方、課題解決能力を養う
今年度から「新教科『情報』現職教員等講習会」が実施されている。
ある県の場合、県内の全公立高校から各1名が参加し、私立高校もほぼ全校が参加した。必修教科である「情報」への対応は急務であるとの認識は、高校としてはかなり高い。
しかし、参加者個人の講習に対する姿勢にはかなりの差異が見られた。主流は、校内のキーパーソンとして学校長から推薦を受け、自身も「情報」に関心が高く、受講にも熱心な教師である。一方で、現在の教科へのこだわりが強く、将来的に「情報」担当になることにやや消極的な教師も少なくない。
新教科「情報」の立ち上げ期には、相当なスキルとパワーが求められる。状況によっては、本来の目標が達成できず、表面的な内容(ホームページの作成といったパソコン操作技術の習得のみ)で終わってしまうことが懸念される。その結果、生徒の伸長に大きな学校格差が生じる可能性がある。その意味で、各校のキーパーソンが参加した今年度の講習会よりも、次年度の講習会参加者の意欲レベルが「情報」の将来を占う鍵として注目される。
長年、高校教育におけるコンピュータ活用を研究されている兵庫県の奥村佳則先生(数学)は、今年度の講習会に参加し、新教科「情報」の持つ可能性への期待が確信に変わったと話す。
「コンピュータは単なる道具であり、『情報』の授業で肝心なことは勉強の仕方を学ばせることです。本来は各教科の指導の中ですべきことですが、残念ながら、その観点が希薄になってきたため『情報』が新設されるわけです。
これまでの指導で『効率的解法』を重視しすぎたことが一因なのでしょうが、一教師としてその意味では悔しい気持ちがします。『情報』は生徒に生きる力を付けさせるための授業であり、その点で『総合的な学習の時間』と非常に近いと思います。与えられた答えを詰め込む努力よりも、課題に対する解答を自力で作り上げることで身に付く力が将来的には大切です。『情報』に本気で取り組むことは一見遠回りのようですが、大学入試においても大きな成果をもたらすと考えています。
『授業時間が減ったのに教科を新設されては苦労が増えて大変だ』というマイナスの発想ではだめなのです。学校完全週5日制の中で自宅での学習習慣をいかに定着させ、自ら考え、調べ、学ぶ生徒に変えていくか。『情報』はまさにそのために新設されたのだと感じています」
政府の「ミレニアム・プロジェクト」の目標は、'05年度末までに「すべての学校」の「すべての教室」で「すべての教科の教師」が「すべての授業」において、コンピュータやインターネットを活用できるような状況を実現することとなっている。
3 「情報」の現職教員等講習会の概要
|
新教科「情報」は'03年度から実施されるが、大学でその教員免許を取得した教師が各校に配置されるのは、'03年度以降となる。その過渡期の対応として、現職教員に「情報」の免許を取得してもらうため、都道府県単位で講習会を実施する。
'00~'02年度の3年間で約9000名が講習に参加し、「情報」の免許を取得する。
-
■参加対象者
- 数学科、理科、家庭科の教師(学校長の推薦によって決定)
※これらの教科担当は専門教科の教員免許で既に「情報」に必要な単位を一部取得しており、講習で不足分(12単位)を補えば免許取得が可能であるため。
-
■実施期間
- 延べ日数/15日間、1日90分×4コマ
※ただし、実施時期は各都道府県の事情により異なる。夏休みに3週間連続で実施した県や、事情により1~3学期に各5日間ずつ実施という県もある。
-
■免許認定法
- 受講と作品提出によって認定
※講習の終了時期が都道府県によって違うこともあり、試験はない。
-
■講習内容
-
テキスト(1)
- 1.指導計画の作成と実習等の扱い 2.問題解決 3.職業指導 4.情報と生活 5.情報社会 6.著作権1 7.著作権2 8.情報モラル 9.ハードウェアの基礎 10.ソフトウェアの基礎 11.データ通信の概要 12.計測・制御の概要 13.コミュニケーションの基礎 14.情報の表し方 15.プレゼンテーションの基礎
-
テキスト(2)
- 1.アルゴリズムの基礎 2.情報システムの概要 3.情報検索とデータベースの概要 4.モデル化とシミュレーション 5.ネットワークの基礎 6.コンピュータデザインの基礎 7.図形と画像の処理 8.マルチメディアの基礎
|
<前ページへ 次ページへ>
|