TTとTAでスキルの異なる生徒をきめ細かく指導
授業は、実習がメインであるため、3名のTT(チームティーチング)とし、大学生や大学院生を交通費支給のみのボランティアTA(ティーチングアシスタント)として採用し、1クラス4人以上のスタッフで指導している。
「TAには授業中の生徒への個別指導はもちろん、授業前に端末の初期設定の確認や、コンピュータ室を開放している時の生徒への対応などをしてもらっています。パソコン経験の有無によって、生徒のスキルは異なります。一人ひとりをフォローするためには、TAの存在は欠かせません」
複数の教師が一つの科目を指導するため、事前に授業の手順を全員で確認し、指導案を作成。教師によって指導法の違いはあるが、基本路線の統一を図っている(下記2)。
また、授業として行う以上、問題となるのは成績評価だ。実習が中心の「情報」では、ペーパーテストのように客観的な点数で評価することは確かに難しい。同校ではペーパーテストは行わず、提出物ごとに点数を付け、学期ごとにその点数をまとめて評価を付けている。
「評価は『教師が伝えたいことが生徒にどれくらい伝わっているか』ということで下すしかありません。生徒が私が伝えたいことをどれくらい理解しているか、提出物や授業中の態度で感触として捉えているつもりです」
コンピュータの基本的な操作を段階を踏んで教えるため、前回教えたことができていないと次へ進むことができない。1回の授業で理解できなかった生徒には、TAの手を借りながら、次回までに習得できるようフォローしている。そのため、ほとんどの生徒が10段階で8以上の評価という。
2 「情報」の授業の基本的な流れ
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保守管理にはコンピュータの専門家が必要
「情報」の授業が本格的に始動してから1年半。授業が軌道に乗り始めた今後の課題は、コンピュータの保守管理と言う。教師は教えることはプロであっても、コンピュータには詳しくない。コンピュータが突然動かなくなったり、壊れたりした時の対応や、メンテナンスまでを教師が行っていては、担当教科の指導に支障をきたす。
「コンピュータの管理はこれまで教育工学委員会の教師がやってきました。しかし、先生方はあくまでもコンピュータのユーザー。ハード面の管理は専門の業者などに外注することも必要だと思います。また、校内に『電子司書』のような存在を作ることも検討しています。先生方が『こういうコンテンツがあると授業に便利』とアイディアを出せば、それを実現してくれるような専門家です。他教科と違い、『情報』はコンピュータの専門家の力を借りることが必要な教科だと思います」
取材中、廊下をすれ違った生徒が川角先生に「電子メールの添付ファイルが開けない」と質問をする一幕に遭遇した。生徒にとって、コンピュータに触れることが日常生活の一部となっていることが垣間見られるようだ。
「生徒たちは、休み時間や放課後、開放されたコンピュータ室を利用して、毎日のようにメールをチェックしたり、インターネットを使って授業の調べものをしているようです。授業が終わった後も、独自に部活動のホームページなどを作って、インターネット上で公開している生徒もいます」
課題は残されているものの、「全教科の学習に活かせる、コミュニケーションツールとしてのコンピュータを教える」という同校の狙いは、確実に達成されつつある。
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