VIEW21 2000.12  創造する 総合的な学習の時間

現在の取り組みを
「総合的な学習の時間」へどう発展させるか

基本はIPTをそのまま移行
学年間の連携などを付け加える

 IPTは「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)を意識して始めたわけではない。しかし、その趣旨は新学習指導要領と重なっていると金津高校は考えており、IPTが「総合学習」に移行する可能性は高い。
 「IPTのやり方で質の高い生徒を育てられるという手応えはつかんでいるので、『総合学習』に移行しても基本的な枠は崩したくないという考えが教師の間にあります」(西川先生)
 IPTは既にそれだけの内実を備えていることがその考えの背景にある。ただ、「総合学習」に移行した場合、新たに考えるべきものとして、学年間の連携が挙げられる。例えば、3年生のあるグループが福祉について研究していれば、福祉に関心のある1、2年生がそこで一緒に学ぶ。あるいは3年生の発表会を1、2年生が聞く。他に、学校祭での発表も含め、上級生の成果を下級生が見るシステムを作ることも考えたいという。
 「先輩はなかなかいいことをやっているなと、下級生は刺激を受け、上級生は他者に見てもらうことで活動への意欲につながります」(丹羽先生)
 「明確な成果を上げることは、生徒に目標、到達点をはっきり示せるという点でも効果的です。今後は、学年間が『総合学習』というラインでつながる方向に行くのではないでしょうか」(西川先生)
 現在、IPTの活動時間は1、2年次で年間24時間。「総合学習」では、年間学習時間が1.5倍程度に増加することになる。「総合学習」の時間をどう埋めるかで苦労している高校もあるようだが、金津高校の場合はIPT自体が「総合学習」の趣旨と合致しているので、時間が増えればかえって活動を十分に展開できると考えている。
 「例えば、今は時間が足りないために、活動の仕上げである発表の時間を十分に取ることができません。今年の1年生の壁新聞の発表も夏休みにやったくらいです。時間が増えれば、正規のコマの中で行うことができます」(西川先生)
 ただ、IPTは学年全体の活動を定義したマニュアルがなく、しかも常に新しい内容に取り組むだけに、エネルギーと準備の時間はそれだけかかる。「総合学習」の30数時間に対応するだけの準備の時間が十分に取れるか、不安視する声も一部にあるようだ。

IPTの活動と「総合学習」の観点は基本的に一致する

 「総合学習」の観点として文部省は、(1)教科横断的・総合的な学習活動、(2)興味・関心に応じた学習活動、(3)生き方・進路を考える学習活動、の三つを挙げている。IPTには(2)・(3)の観点があるのは言うまでもないが、(1)についても、必然的に教科横断的になると、西川先生は言う。
 「例えば環境問題。そういう教科はもちろんありませんから、既存の教科を一旦バラバラにして、環境問題に関連させて地歴・公民、理科、英語などを横断的に学んでいくことになります。今までもIPT活動が成功しているのは、校長をはじめ先生方の一致団結した力があったからです。今後もより一層の団結が必要になると思います」
 丹羽先生も、「総合学習」に移行すれば、「その方向性をさらにはっきりさせることになるかも知れない」と話す。他に、教師が担当教科とは別に、自分の興味のある分野に関する講座を開いて、自由参加で集まってきた生徒と共に研究する講座制の実験も既に行われており、その実施も考えられる。
 また、IPTは教える側にも影響を与えているという。
 「授業のやり方が変わった教師もいます。数学の例ですが、以前はその日の内容をすべて教師が解説するという授業だったのが、今は生徒に解説させて問題があれば生徒と共に考えるという授業に変わってきたそうです。まだ一部の例ですが、IPTでやってきたことが日々の教科の取り組みに反映された例です」(西川先生)
 IPTの成果として、生徒の社会問題への関心の高まり、進路意識の明確化などがあるが、課題として表現力などがまだ十分に育っていないことを挙げる。「総合学習」への移行もにらんで、それらをどう育成するかを考えていきたいという。


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