毎週会議を開き内容を決定して直前マニュアル作成
IPTでは以前行った活動を改善することなくそのまま踏襲することを嫌うため、1年間の活動全体を詳細に記したマニュアルを作ることも、それを手本にして次の活動を行うということもない。
「マニュアルを作ってルーティン化すると、その都度その都度のアイディアが活かしにくく、また錆びてくる部分もあります」(丹羽先生)
その代わり、活動の一つひとつについては毎週、IPTのスタッフが集まって直前マニュアルの原案を決め、学年会にかけて軌道修正してから実施する。表2の『IPTの指導計画案』(2000年度・1年次)のように主に作業の手順が書かれている。
「直前マニュアルがあれば、先生方も不安を感じずに取り組むことができます」(西川先生)
そして活動の節目ではクラスごとに生徒からアンケートを取り(表3)、それを集約して年度末の会議に諮る。反響の良いもの、成果が上がったものについては次回以降の活動に何らかの形で組み込むこともある。このように学年団が連携して取り組んでいること、生徒の気持ちを無視しないことが、活動が活発であり続ける要因の一つだろう。
とは言え、常に新しい試みにチャレンジするだけに、ときには失敗することもある。
「新しい企画に対する生徒の反応がいまひとつでうまくいかないことはあります。IPTはマスコミに取り上げられることもあり、活字になるとあたかも整ったことをやっているように思われがちですが、まだまだ実験段階、試行錯誤の段階です」(丹羽先生)
表2 ● IPTの指導計画案
活動前にIPTのスタッフが、その進め方、注意点などを記した、教師用の直前マニュアルを作成する。
表3 ● アンケート集計
一つの活動が終わる度にクラスごとに生徒からアンケートを取る。年度末にはそれらを集計して学年会の会議にかけ、その後の活動の参考にする。
活動の成果は進学実績にも反映されつつある
IPT活動は後ろを振り向くことなく走り続けてきたが、今年度になって活動の歩みを総括する冊子を出した。その中で、金津高校が育成を目指す人間像として「豊かな心と良識を持つ人間」「国際社会に通用する人間」を挙げている。丹羽先生と西川先生は、IPTの活動を通して、具体的にどんな力を持った生徒を育成しようと考えているのだろうか。
「従来型の学習は知識を持たせることが中心でした。それももちろん重要なことですが、得た知識をどう使い、どう他者に発信するかという部分が欠けていました。これからは発信する力を大切にした指導に重点を置きたいと考えています。現在、教育について各種の懸念が言われています。ですが、今後の日本の教育システムが、吸収するものと発信するものとのバランスを取れるような形になっていけば、国際社会でも評価される学生が育つと思います」(丹羽先生)
「小論文、ディベート、課題研究という三つの取り組みを通して、自分は何のために生き、将来何をしたいのかという問いに正面から向き合える生徒を育てたいですね。1年次の文理選択で迷う生徒が多いのが実状ですが、自分はこうするんだというものを高校時代に見つけさせたいのです」(西川先生)
本来IPT活動は、進学のためだけに行っていたものではないが、その面でも成果が上がりつつあると、西川先生は指摘する。
「生徒会活動やボランティア活動などに積極的に取り組む生徒はともかく、かつては調査書の欄に特に書くべき事項がない生徒も少なくありませんでした。しかし、IPTを始めてからは課題研究の活動内容などを、多くの生徒に対して書けるようになりました。また、小論文の課される入試でも成果が上がっていると思います」
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