厳密な成績評価をいかに導入するか
――答申は、学生が勉強しなくても単位が取得できる状況の改善のため、厳密な成績評価の導入を提言しています。
井村 そうですね。しかし実際に厳密な成績評価が広がるかどうかは、大学の自主的判断に任せざるを得ないでしょう。最初に国立大が取り組んで、それがうまくいけば公立、私立大の参加も増えるのではないかと期待しています。ただし、将来的にはある種のナショナルスタンダードを作って、ここまでは到達しなくてはいけないというような基準を設けるべきだという動きも出てくる可能性はありますね。
――単位認定は、単位互換制度の拡充など、柔軟化を打ち出していますね。
井村 大学審議会の議論では、インターネットで外国の大学の単位を取った場合でも、それをできるだけ認定していこうという動きになっています。しかし20歳前後の若い学生は、恩師と知り合い、仲間たちと切磋琢磨する中で学問を学ぶということも大切ですから、ネット上で認められる単位は制限が付けられることになると思います。
また今後は、日本の大学で在学中に海外留学して単位取得をする学生も増えると予想されます。それも認めるわけですが、難しいのはアメリカなどではアクレディテーションを受けていない大学もあるようですから、何らかの基準が必要になりますね。既に工学系にはJABEE(6)のような国際的な教育評価基準がありますが、今後は他の学問分野においても、このような基準作りが始まると考えられます。
――大学評価に関しては、答申の中で第三者機関による大学評価の必要性(7)が述べられていましたが、具体的にはどのように進んでいくのでしょうか。
井村 評価は、三つの柱で行う必要があると思います。一つは教育、一つは研究、もう一つは大学の組織運営の面での取り組みについて。大学評価については、評価はするが大学に縛りはかけないというのが前提になるでしょう。今まで文部省は規制をかけすぎました。それが大学の自由な発想を抑制して、個性の輝く大学ができない原因となりました。だから大学には独自性を発揮してほしい。しかし一方で大学に対して、客観的で信頼性の高い評価も行っていこうというわけです。私も一時、大学評価・学位授与機構の設立準備に関わりましたが、そのときに要望したのは、あまり手間がかかる評価方法はだめですよ、ということです。実用性がありませんからね。
(6)JABEE
日本技術者教育認定機構。
JABEEはJapan Accredetation Board for Engeneering Educationの略。
大学などの高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムが、社会要求水準を満たしているかどうかを公平に評価する外部機関。教育プログラムが要求水準を満たしているかを認定する技術者教育認定制度に基づき評価。
政治、経済、産業などの国際化に伴い、技術者の活躍の場も大幅に国際化する中、国際的に通用する技術者資格が必要になってくる。各国で実施される技術者教育にも同等性が求められているが、日本にはそのような制度がないため、日本の技術者が外国で活躍し辛い状況が今後増えてくると考えられる。そこで、技術者教育の国際的同等性を相互に認定する協定(ワシントン・アコード)への加盟を目指す組織・JABEEを設立。
(7)三者機関による大学評価の必要性
答申では、各大学が教育研究の個性を伸ばし質を高めるための環境を整備するため、大学による自己点検・評価の充実とともに、第三者評価システムの導入の必要性にも言及している。その目的は、透明性の高い第三者評価を行い、その結果をフィードバックすることで、教育研究活動の個性化や質的充実に向けた各大学の主体的な取り組みを支援・促進することとされている。
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