VIEW21 2000.12  特集 変貌する大学と入試

2 センター試験
センター試験の改革案を巡って

年度内2回実施の問題点とは

鳴島 先程のセンター試験の年度内2回実施の話ですが、大学審議会で提言はしましたが、実際には問題を抱えています。2回やる場合に、試験会場が両方とも大学というのは現実的ではありません。1回は大学で、もう1回は高校でという形になる可能性が高いですね。高校側の協力を得て実施する必要があります。
高田 文部省は、かなり2回案を推しているようですね。
鳴島 それが受験生の要望だというのが、2回実施案の根拠です。再挑戦の機会が必要ということですね。
石浜 本当に受験生は何度も受験することを望んでいるんでしょうか。私は直接生徒と接していますが、あまりそうは感じません。受験生は少しでも高い得点を取るために両方受けることになり、結局負担が増えるのでは。
鳴島 2回実施をするときには、センター試験の質も変わることが前提となります。今のセンター試験の問題はちょっとレベルが高すぎます。これは上位層の受験生を弁別するためなんですね。しかし大学審議会で今考えているのはセンター試験の資格試験化です。「中間まとめ」ではこんな風に書いています。「センター試験で必要な成績水準を示し、成績がその水準に達している者は個別試験に進ませ、個別試験の成績のみで合否判定する」。これはつまり一定水準以下は門前払いということですね。センター試験は一定の水準に達しているかどうかを見る資料として活用して、個別試験はみんな同じ地点から再スタートというわけです。もちろん違うやり方もあって、例えばセンター試験で700点以上をとった受験生は面接と論文で合否判定をし、それ以下には学力試験を課すという方法も考えられます。
石浜 門前払いというのは、実際に受験生がその大学に出願した後になって「何点以上の者のみ個別試験に進める」と発表されるのか、それとも、事前に大学側が標準点数を提示してくれて、受験生はそれを見ながら出願できるのか、どちらになるのでしょうか。
鳴島 それは大学によって違ってくると思います。事前提示をする大学もありますし、倍率などのことを考えて事後通知になる大学もあるでしょう。これは、提言の中にも盛り込んだ「センター試験の成績の本人への開示」の進み具合にもよります。
 そうですね。今のような自己採点形式ではなく、本人への成績の開示が不可欠でしょうね。自己採点で間違って計算してしまって、「自分は受験できる」と思って出願してみたら、門前払いにあってしまったというのでは不幸ですからね。

センター試験で測る能力とは何か

高田 「中間まとめ」にあった教科・科目の枠を越えた総合的な問題や総合的な試験に、話題を移したいと思います。'99年、大学入試センターが、センター試験でどういう能力が測れるかという調査を実施しています。それによると基礎知識や基礎学力はセンター試験で把握できるが、表現力や応用力、論理的な思考力はつかめないという結果が出ています。これが教科横断型の総合的な問題が登場してきた背景ではないかと思うのですが。
鳴島 もう一つの理由は、新しい学習指導要領があまりに細分化されていて、標準単位数が2単位である必修教科が増えることですね。これを1教科として試験を実施するのは難しい。もう少し大くくりにする必要があるだろうということなんです。ただし、いくら教科横断型の総合問題を導入しても、ペーパーテストで本当に思考力や表現力を測れるのかという問題はついて回りますね。ですから結局のところ、センター試験というペーパーテストでは評価しきれない能力を、個別試験で各大学がどれだけすくい上げようとするかがこれからのポイントになると思います。
高田 もしも、教科横断型の総合的な問題をセンター試験で出すということになった場合、何年度からになりますか。
鳴島 新学習指導要領に即した'06年度センター試験の出題科目は、'03年4月までに決定することになっていますから、それまでには結果が出ると思います。
高田 総合的な問題にはいくつかタイプがあります。代表的なものとしては、英語で題材を出して理科的な知識を問うようなタイプのものと、適性検査の二つがあると思いますが、両方とも検討中ですか。
鳴島 そうですね。大学入試センター内部で検討しているようです。
藤井 「中間まとめ」では、過去に出された問題でも良問であれば再利用するとありますね。これは高校側から言えば、善し悪しにかかわらず過去問をすべて洗い出して、生徒にその部分だけを徹底的にやらせるといったことをせざるを得なくなります。でも、果たしてそれでいいのか……。
村山 センター試験の年度内2回実施も、高校現場を混乱させることになると思います。12月と1月に実施するのが最も適当ということですが、授業の進度のことを考えてほしいですね。それに2学期の期末試験を含めて、学校行事に与える影響も大きいですよ。

図6 大学審議会中間答申におけるセンター試験改革案骨子
  1. 成績の資格試験的な取り扱いの推進
  2. 良質な試験問題の出題
    ・過去に出題された問題や類題の再利用
    ・良質な試験問題とその分析評価をデータベース化したアイテムバンク構築
    ・試験問題作成段階における高校関係者の参加(機密性保持の観点から退職職員を活用)
  3. 教科・科目横断型の総合的な問題や総合的な試験の導入
  4. リスニングテストの導入
    ・公平性を確保するため、高校の教室を試験会場に活用、高校教員に試験監督として協力を仰ぐなどの高校との協力体制を検討
  5. 年度内複数回実施
  6. 成績の複数年度使用
    ・複数年度利用の範囲は、1年前の試験の成績のみ
    ・実施時期は平成14年度入学者選抜よりが適当
  7. 成績の本人開示
  8. 新しい学習指導要領への対応,成績の資格試験的な取り扱いの推進

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。