鳴島 おっしゃる通り、「中間まとめ」の提言の中には、解決するべき問題点が多いですね。特にセンター試験の12月実施は、「高校の教育を破壊することになる」という高校側からの批判が強いです。しかし、センター試験の成績を本人に開示しようと思ったら、スケジュールを考慮した場合、12月にセンター試験を行わない限り不可能なんですよ。この点に関しては、高校関係者と大学関係者の協議の場を設置して、より良い一致点を見つけていく必要があると思います。
高田 教育改革国民会議では、中間報告で現在実施が検討されている高等学校における達成度試験を、センター試験と組み合わせようという考えが出されていますね。
鳴島 センター試験自体が達成度試験になっていく可能性もありますから、これもこれから議論されることです。
高田 センター試験で測る学力とは、中央教育審議会答申によれば、基礎的な学習の標準的達成レベルと、もう一つは大学教育のレディネス(学習への適応、準備状態)のレベルということになっています。ここでいう基礎的な学習の達成度が、4単位の教科で測られるということになれば、普通科で4単位の科目を2単位しか履修していない専門高校の生徒たちは、事実上国立大に出願できないという問題が生まれてきてしまいますね。
鳴島 その点については、実業高校の校長からも要望が上がっています。専門高校で育てられた力をどう評価するか、ということも、大学が解決していかなくてはならない課題です。
3 大学個別試験 変化する各大学の入学試験
募集単位の大くくり化のメリット・デメリット
高田 センター試験ばかりでなく、個別試験の仕組みに関しても、大きな変わり目に差し掛かっているようですね。その一つが募集単位の大くくり化の方向性です。学科、コースごとに学生を募集するのではなく、東京大の文I、理Iのように、もっと大枠で学生を採ろうというわけです。そして3年次に進級するときに、専攻学科・コースを最終決定するという仕組みです。
石浜 確かに生徒の中には、高い思考力を持っていながら、最後の最後まで文系にしようか理系にしようか悩む者もいます。そういう子が学部・学科を絞っていくのは大変ですから、彼らにとってはありがたいですね。
高田 大学改革全体が学部段階は教養教育中心で、専門教育は大学院で行う方向に進んでいるようです。その結果として、高校時代に細かい進路を決めてしまうのではなく、大学に入学していろいろな学問に触れてから進路を決めればよいということで、募集単位の大くくり化が出てきたのでしょう。
しかし大くくり化が進むと、石浜先生が指摘されたようなメリットがある反面、例えば地球物理学がやりたくて理学部に入ったのに、専門課程に進むときに希望が通らなかったというようなケースも増えることになります。大学側は、キャリア教育という観点で、このような難点をどのように克服しようとしているのでしょうか。
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