原 国大協が試案として出した、医学部の理科3科目試験には対応できそうですか。
石浜 うちは全く無理です。今は1年次で化学を履修し、2年次は文系が生物、理系が物理になっています。
村山 うちは何とか対応できますが、詰め込み教育になるのが嫌なんです。そもそも全体の単位数が減っている中で、教えなくてはいけない科目数が増えるのは……。
高田 メディカルスクールなどを設置して高度専門人の育成を目指していく大学や、研究志向の大学の中には、物理、化学、生物の3科目を課す大学が出てくると思います。
これにどう対応するかですが、最近、公立の伝統校の中には、文理選択を少し後ろにずらした方がいいんじゃないかという考えを持つ高校が増えています。3学期制ではなく2学期制にして、2年次の後半から文理編成に入るんです。こうすれば、理科3科目にも対応できるのではないでしょうか。文理選択は2年次当初からでは早すぎますし、3年次からだと遅いですからね。
原 大学入学時点で、学力や適性が完成していることを求めるのではなく、大学に入ってからの必須となる生物は大学の教養教育で必ず履修するなど、メディカルスクール構想の中にうまく組み込むこともできるという考えもあると思います。ここにも、大学と高校の双方が話し合う余地がありそうですね。
では、次に総合的な問題への対応についての考えをお伺いします。
藤井 本校の数学で言えば、教科書が一通り終わるのは10月末です。理科などは、ひょっとしたらセンター試験直前かも知れません。そんな状況の中で、基礎をしっかり身に付けた上で総合的な問題の対策をするというのは、ちょっと厳しいですね。
高田 公立高校では「総合的な学習の時間」で1年次で進路学習、2年次で指導要領に明示されている福祉、環境、国際といったテーマ学習、そして3年次で課題研究を行うところが多いようです。このテーマ学習と課題研究が、小論文や総合問題に対応できる力を付けるうえで重要ではないでしょうか。
もう一つ「情報」という科目がありますが、今の生徒は高校入学段階でパソコンなどのスキルはある程度上達しているでしょうから、たぶん「情報A」は教える必要がありません。そこで「情報C」と「総合的な学習の時間」を結び付けて、例えば金曜の5時間目、6時間目に時間割を組めば、体験学習も可能になり、かなり密度の濃い授業が展開できると思います。
原 あとは、学習指導要領の範囲を越えた入試問題が出題された場合の対処法ですが……。
鳴島 それは対策の立てようがないでしょう。指導要領を逸脱する場合は、限りなく逸脱するわけですから。そのときは大学に説明を求めて、納得がいかなければ高校サイドから大学を徹底的に叩けばいいんです。
原 そのためにも、高校と大学が話し合う場を設定することが大切ですね。
高田 そのときは管理職だけが出席するのではなく、今日お集まりいただいたような現場の先生方が参加できるような場にしないといけませんね。本日はどうもありがとうございました。
図10 国公立大個別学力検査の変化
国立大個別試験を見ると、年々多様化している。特に小論文、総合問題、リスニングの増加率が高い。
※国大協など調べ。
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