VIEW21 2001.02  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 長崎県立諫早高校

長崎県立諫早高校

進路研究室を開設し自発的な情報収集を促して
生徒の進路意識を高める

 長崎県立諫早高校では、「自己理解→自己発見→志→自己改革」という目標を掲げ、生徒の進路意識の向上を第一の目的に考えて、進路指導に取り組んでいる。進路指導副主任の原田尚之先生は、その理由をこう話す。
 「今の生徒は何のために勉強するのか、動機をはっきり持てないと勉強に向かいにくいんです。でも、自分が納得できる明確な目的があれば動く。だったら、教師が生徒にその将来を考えるきっかけを与えることが大切と考えたのです」
 もちろん、生徒全員の意識を、一つの取り組みだけで変えることはできない。一回では少数の生徒しかフォローできなくても、いろいろな方向から生徒の意識に訴えかける取り組みを行うことで、結果的に生徒全体を網羅することができ、進路選択を考えるきっかけを与えることができると考えている。1年次から、進路を考えさせる小論文指導や、大学教授の講義形式による学部・学科研究会を取り入れているのは、生徒に大学受験だけではない、自分の「志」を持たせるためだ。

生徒の情報格差をなくす

 それらの取り組みの一つとして、同校が'00年度4月に開設したのは「進路研究室」だ。空いていた教室に、パソコン10台とコピー機を設置し、インターネット対応の「Fine system」を導入。昼休みや放課後に部屋を開放し、生徒が自由にインターネットにつないで、大学情報や職業情報を調べられるような環境を整備した。
 「この地域でパソコンを持っている家庭はまだ少ないと思います。でも、全国的に見れば、インターネットはものすごいスピードで普及している。インターネットを見ることができる環境の生徒と、そうでない生徒の情報量の差が大きすぎるんです。その情報格差をなくそうというのが『進路研究室』の最大の目的です」(原田先生)
 この進路研究室の特徴は、昼休みや放課後などの生徒が使用する時間帯には教師はなるべく入室せず、生徒の自主性に任せていることだ。生徒が使用する時間帯には、教師が進路研究室のパソコンを使うことを遠慮していただくようにお願いしていると、進路指導副主任の大山立身先生は言う。
 「生徒がインターネットで調べたことを友達に話すことで、生徒同士が自分の進路について話し合うきっかけにもなると考えました。ですから、教師がその部屋にいることで生徒が萎縮してしまっては、私たちとしても本意ではありません。たとえ生徒が使っていない場合でも、昼休みや放課後に教師がこの部屋を使うことはないように申し合わせています」
 進路研究室にはパソコンの置いてある机以外にも、机やいす、ソファが置いてある。また、小論文指導で生徒が切り抜いた新聞のコピーや、『知恵蔵』(朝日新聞社)などの事典も棚に並んでおり、パソコンが空く順番待ちをしている間も情報を集めたり、生徒同士でゆっくりと話せるようになっている。
 パソコンの使い方については、各クラス2名の生徒を進路情報係に任命し、最初に教師が「Fine system」の使い方を指導。アシスタント的な存在として、昼休みや放課後に交代で常駐してもらうようにした。


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