VIEW21 2001.02  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 長崎県立諫早高校

大学研究など他の進路学習と連動

 その一方で、進路研究室の活用を促すために、他の取り組みと連動させている。「学部・学科研究会」では、1、2年生を対象に、24名の大学教授に学部・学科の特性について講義してもらった。その事前学習として、自分が聴講する教授の関連する学部について調べている生徒が見受けられたという。
 「生徒には、最後に質疑応答の時間があることを伝え、興味ある点を調べておこうとは伝えましたが、強制はしませんでした」(大山先生)
 その点について、進路指導部の和田亮一先生は、「学校内にすぐに検索できるシステムがあるので、気軽に情報収集できるようになったからでしょう」と分析する。
 また、2年生には、自分の興味ある大学・学部・学科について調べるという活動をLHRに行った。調べた結果はB4判の用紙に書き込んで提出させたが、そこにはインターネットで調べた項目が連なっていたという。
 「学部・学科の概要が項目別にコンパクトにまとまっているシステムは、生徒が大学を知るための入口に適していると思います。ただ、パソコンから打ち出したプリントを張り付けただけで提出してきた生徒もいました。得た情報を自分なりにどう消化させるのかが、これからの課題ですね」(和田先生)

低学年でも高まった進路意識

 取材に訪れた日も、進路研究室は生徒でいっぱいだった。この部屋が生徒の重要な情報収集の場の一つとなっていることがうかがえる。
 「インターネットは、はっきりとした目的がある生徒には、検索ツールとしても有効です。ある生徒は『中東の歴史を勉強したい』と言って、ホームページでそれを研究できる大学を探し出してきました。その志望校は、所在地は全国各地ばらばら、学部名も一見まちまちなのですが、本人にとっては統一性があり、絶対に譲れないものなんです。生徒にそこまで活用してもらえているのならば、進路研究室を作った意義があったと言えるでしょう」(原田先生)
 生徒の進路への動機付けを、様々な角度から行っている諫早高校。1年生の文理選択の面談や、2年生のコース分けの面談で、はっきりと目標を口にする生徒が増えたと言う。
 「目標が明確になった分、それに固執する面も見受けられますが、とにかく進路について生徒と話すきっかけができたのです。次のステップでは視野を広げさせ、学習につながるような指導をと考えています」(大山先生)
 低学年から高い進路意識を持つ生徒たち。様々な取り組みが実を結ぶ、1、2年後の生徒の姿が楽しみだ。


写真 原田尚之 写真 大山立身 写真 和田亮一
原田尚之
教職歴17年目。同校に赴任して7年目。進路指導副主任。担当科目は数学。「自分の意見を伝えることで、生徒が何かを感じてくれたらいいと思います」
大山立身
教職歴14年目。同校に赴任して4年目。進路指導副主任。担当科目は英語。小論文委員長。「常に新鮮な気持ちで生徒と接していきたいですね」
和田亮一
教職歴13年目。同校に赴任して4年目。進路指導担当。担当科目は政治経済。「生徒が目標に向かっていく環境を整えることが大切と考えています」

長崎県立諫早高校
1911年創立。共学の普通科高校。全校生徒数は1124名。'00年度入試では、長崎大51名、九州大14名など国公立大に212名が合格。私立大には福岡大11名など延べ181名が合格。進路指導に力を入れる一方、「相談室」に職員が常駐し、生徒の問題の早期発見・対応に努めるなど、新しい試みにも積極的に取り組む。


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