VIEW21 2001.02  2001年・中学校・新事情

中学生の食生活

「生」の土台である「食」が崩れつつあるという
生徒たちの実態は……

 いじめや不登校、キレる子、学級崩壊、学習意欲の低下など、生徒たちの異変が大きな問題となっている。その背景の一つとして、不規則な睡眠時間やバランスの悪い食生活など、本来身に付けておくべき生活リズムを欠いたまま歳を重ねている生徒の増加を指摘する声は少なくない。
 生徒たちの“生活の崩れ”が、学校での態度や身体面、精神面にどのような影響を与えているか。今回は、生活の大きな柱である“食事”を軸にレポートする。


 宿泊研修での夕食時間のこと。神奈川県の公立中学校に勤めるS教諭は、唖然とさせられる光景に出くわした。生徒たちは細長いテーブルに、向かい合いながら夕飯を口にしていた。それぞれの生徒の前には、ご飯と副食、汁物が並べられている。ところが何人かの生徒が隣の生徒の肉が気になり、なんと取り上げて食べ始めたのだ。分捕られた生徒の方は、気が弱いせいか、情けなさそうな顔をしたままだった。
 S教諭は生徒たちを注意しながら、「これが子どもたちの家での暮らしぶりなのか」と驚いていた。まず、一人っ子が多く、両親が仕事などで忙しいため食事を一人で取る“孤食”が増えているせいか、他者と食卓を囲む上でのマナーが身に付いていない。また、他の生徒のおかずを横取りした生徒は、決して食事の量が足りなかったわけではない。その証拠に本人の皿の上には、たくさんの野菜類が残っている。好きなものは箸を出す。だが、嫌いなものは徹底して手を付けない。生徒たちの夕食の残飯は、目を覆うほどの量になった。「これじゃ、罰が当たるぞ」と、S教諭は本気で思った。
 「指導が大変なのは、食事時だけではありませんでした。深夜の3時、4時まで起きているため、朝のラジオ体操の時間に起きられない。顔洗いやトイレにも、すごく手間が掛かりました。また修学旅行に行っても、生徒たちは移動中のバスの中でずっと間食をしています。そしていざ、ご飯の時間になるとお腹に入りません。生活全体がおかしくなっていますね」
 東京都の公立中学校に勤めるT教諭も、「ある生徒は、もう何年も朝ご飯を食べたことがないと言っていました。ときどき朝食抜きという生徒はざらですね」と語る。原因はどうやら、就寝時間の遅さにあるようだ。どことなく覇気が感じられない生徒たちに「君は昨晩何時まで起きていたの?」と聞くと「1時です」「2時です」という返事が返ってくることも珍しくない。確かに部活動の後に塾に行き、帰宅後に夕飯を済ませて宿題やゲームをやっていると、そのくらいの時刻にはなるだろう。当然、朝はぎりぎりまで寝ているため、朝食を取る余裕はない。学校には登校時間間際に駆け込み、こちらから挨拶をしても不愉快そうな顔が返ってくるだけだ。そして授業が始まっても、午前中はずっとけだるそうな表情をしている。
 「生徒たちの姿勢の悪さも気になります。右肩と左肩の高さが明らかに違うくらい体が傾いている子や、猫背の子が目立ちますね。授業中もイスの背もたれに寄っかかるようにして座っています。注意をしても10分も持ちません。生活の乱れが体にも出ているように思います」


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