VIEW21 2001.02  創造する 総合的な学習の時間

取り組みの実践例

長崎県立上五島高校
地域の活性化を目指す取り組み

 「総合的な学習の時間」を先取りした取り組みとして、進路学習や小論文学習を中心に置いたものが多い中、研究開発校として、あえて「学校」や「地域」の活性化を目的に据えて、「総合的な学習の時間」に取り組んでいる高校がある。その取り組み内容と、教師間の共通認識の確立過程などをレポートする。


取り組みの内容

学校と地域をテーマにした「総合的な学習の時間」を展開

 多くの高校が'03年度から「総合的な学習の時間」を開始しようとする中で、いちはやく着手している高校もある。長崎県の五島列島に位置し、1学年7クラスを有する、離島部の中では大規模校となる上五島(かみごとう)高校は、文部省(現在は文部科学省)と長崎県教育委員会の指定を受け、研究開発校として'99年度より3年計画で「総合的な学習の時間」の研究実践を進めている。
 同校が研究開発校に指定されたのは'98年の末。「総合的な学習の時間」のスタートは数ヶ月後に迫っていた。
 「研究開発校になったとき、先生方の反応は、“鳩が豆鉄砲を食った”という様子でした。教師はややもすると、『それは理科や地歴・公民科の領域だ』とか『どこどこの分掌が適している』と、教科や校務分掌の枠の中に収めたがる傾向があります。しかし『総合的な学習の時間』は、それではうまくいきません。先生方の認識の共通化を図ることが、取り組みをうまく進めていくポイントになるだろうと考えました」と語るのは、研修部主任の嶺英俊先生。研究開発校の指定を受けたからといって、楽に事が進んだわけではなかった。
 研修部では職員対象に「総学のすすめ」というプリントを矢継ぎ早に作成し、積極的にアナウンスした(図2)。作成する資料は、分かりやすさを重視し視覚面にも気を配った。そして、研究開発校としての研究テーマも「『総合的な学習の時間』を全生徒・全職員のものにするために」と題した。
 研究期間が3年の場合、最初の1年間は理論研究に費やすことも可能だ。だが、同校では生徒たちが高校に在籍する3年間を見通した指導手法を確立しておきたいという思いが強かった。'99年度からスタートするには、教師全員で細かい実践方法まで吟味している余裕はない。そこで小回りが利くように、管理職や研修部のメンバーを中心とした小人数で構成される研究企画委員会を設置し、大急ぎで資料収集を行い、青写真を描いていった。実際に他の教師に「総合的な学習の時間」に対する理解を深めてもらうのは、実践を通してということになった。


写真 嶺 英俊 写真 橋本和樹
長崎県立上五島高校
研修部主任

嶺 英俊
Mine Hidetoshi
教職歴15年目。同校に赴任して3年目。担当教科は地歴・公民。「島を離れたった一人で社会に直面しなければならない生徒たちに『生きる力』を身に付けさせたい」
長崎県立上五島高校
研修部副主任

橋本和樹
Hashimoto Kazuki
教職歴10年目。同校に赴任して7年目。担当教科は地歴・公民。「教師も生徒も試行錯誤を重ねながら学んでいく。そこに『総合的な学習の時間』の意義があるのでは」

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