★学校現場におけるIT化推進の背景★
コンピュータの導入とインターネット利用の本格化
諸外国に比べ立ち遅れる日本のインターネット環境
IT革命が叫ばれる現在、学校内のインターネット環境に限ると、日本は諸外国に比べ遅れているのが実状だ。インターネットに接続できる学校の割合は、最も進んでいるアメリカが約95%('99年)。それに対して日本は'00年3月時点で約57%に過ぎない。また、文字、音声、画像などに対応したマルチメディア・コンピュータ1台当たりの生徒数は、アメリカの6人に対して日本は13人である。授業以外の時間で自由に使えるコンピュータの台数を考えると差はさらに大きくなる。
'00年度から6年計画で進められている「ミレニアム・プロジェクト」では、「すべての学校」の「すべての教室」の「すべての授業」で、「すべての教師」がコンピュータやインターネットを活用できる環境を実現することを目標としている。具体的には、(1)すべての「普通科教室(学級)」に「各教室2台ずつ」(2)その他の教室等(特別教室など)用に「各学校6台ずつ」(合わせてプロジェクターなどを整備することを想定)と急速に整備が進む予定となっている。
IT化で高校が変わる五つのポイント
コンピュータの導入が進む背景には、導入によってもたらされるプラス面への様々な期待がある。具体的には、主に次の五つの領域にまとめられる。
1.情報収集とプレゼンテーション
調べ学習や進路学習での情報収集のために、ここ数年で多くの高校がインターネットを導入している。また、プレゼンテーション用ソフトを使えば、文化祭などで画像や音声を組み込んだ発表を行うことができる。
2.校内コミュニケーションの促進
教師間の連絡事項をメールで伝えれば、職員朝礼での業務連絡が不要となる。また、校内ネットワークは新しいコミュニケーションを生む。生徒が面と向かって教師に相談できなかった悩みを、メールでなら伝えられるというように、今までのコミュニケーションとは違った関係ができる場合がある。
3.地域・保護者・卒業生への情報発信とコミュニケーションの活発化
ホームページは、生徒が地域に疑問や質問を投げかける他に、広報ツールとしての役割と地域や保護者とのコミュニケーションを深化させるなどの役割が考えられる。
4.教材データベースによる効率化
定期テストや小テストの問題をストックしたり、入試問題とその類題を関連付けて整理しておき、データベースとして活用すれば、問題作成の負荷軽減につながる。また、新任教師への引き継ぎも効率化できる。分野別に問題を検索できるようにすれば、生徒が弱点分野を重点的に復習できるなど、効果的な学習につなげることが可能だ。
5.生徒情報の管理の合理化
定期テストなどの成績管理から進路に関する情報まで、一人ひとりの生徒の情報を入学から卒業まで一括して管理することができる。しかも入力作業やメンテナンスを合理化することができる。
ちぐはぐなコンピュータ活用の現状
しかし高校現場の実状は、「自分のためにコンピュータを使える」教師は全体の約7割に達しているが、「授業における指導のためにコンピュータを使える」教師はその3分の1となっている。さらに「インターネット回線は高校につながっているが、進路室やコンピュータ教室とは接続できていない」「コンピュータ教室はあるが、その教室を使う授業がないため、何のためにあるのか分らない」「情報を共有化するため校内LAN(端末を通信回線で結ぶ通信網)は引いたが、教師の使っているワープロや表計算などのアプリケーション・ソフトがばらばらで、情報が共有化できない」といった声も聞かれる。コンピュータの環境を整えるインフラ面と、実際に使うための運用・活用促進のための面が噛み合っていないなど、IT化に関する課題はまだまだ山積みされている。
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