VIEW21 2001.04  英語教育の新機軸

授業改善に役立つ内容

 「英語指導法勉強会」の柱は二つある。英語教育に関する専門書の輪読と、会のメンバーの授業を撮影したビデオでの授業研究だ。この二つを交互に行っている。
 「実は、第1回目の合評会は、私の授業が素材でした。新里先生から『授業をビデオに撮って、その合評会をやろう』と言われたときは、面白いと思う反面、少し抵抗感もありました。自分の授業を他の先生に見られることに、高校の教師は慣れていませんから。そうしたら、第1回目は岡崎先生がやったらどうでしょうと新里先生に言われたんです。発起人という立場もありますし、私が最初にやることにしました」(岡崎先生)
 撮影したのは英語Iの授業で、その8割程度を英語で行った。
 「でも、やってみて『Yes,Noだけで答えられる質問の他に、Whyなどの質問を入れた方が生徒の考えを引き出せるのでは』という意見をいただいたり、とても参考になりました」(岡崎先生)
 この授業研究は、現場の授業で活かせる工夫を見いだしやすい利点を持っている。コミュニケーション重視の必要性が叫ばれているとは言え、授業をいきなり変えることは難しい。そこで、従来の授業の中に、いかにしてコミュニケーションの要素を増やしていくかという視点が大切になってくる。その意味で授業研究は、現状を踏まえた上での改善を考えられるので、個々の教師が自分の授業に活かしやすいと言えるだろう。
 「会のメンバーは、実践的コミュニケーション能力の育成という方向性は共通して持っている」と岡崎先生は話す。魚津高校では、その方向性の下、1年生対象に「英語コミュニケーション能力テスト」を実施したという。新里教授も「あのテストは、コミュニケーション能力の達成度を図るペーパーテストとしてはよくできていると思います」と話す。
 コミュニケーション能力の育成はもはや時代の要請であるが、その力をどのような授業で培っていけばよいのかはまだ手探り状態だ。「英語指導法勉強会」に集うような、授業改善を目指す教師たちが、10年後の英語教育の礎を、今、築いているのかも知れない。


写真 新里眞男 写真 岡崎浩幸
富山大教育学部教授
新里眞男
Niisato Masao
東京都立府中東高校で5年間、筑波大学附属高校で20年間、筑波大で講師として1年間教鞭を執った後文部省の教科調査官を経て現職に就く。'80年、オーストラリアへ1年間の留学の経験を持つ。
富山県立魚津高校教諭
岡崎浩幸
Okazaki Hiroyuki
教職歴18年。魚津高校に赴任して7年目。中学校で2年間教えた経験を持つ。「英語指導法勉強会」に関する問い合わせは岡崎先生のEメールアドレスまで。Eメール okaza@micnet.ne.jp

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