事例
岡山県立林野高校
取り組みの内容
自主的活動の場を生徒に提供し 進路への関心を高める
林野高校がこの2年間、意欲的に取り組んできた「マイドリームプロジェクト(MDP)」。その始まりは試行錯誤の連続であった。進路指導課長の上原先生はこの新たな取り組みを決意したきっかけを、「我が校の恵まれた環境に起因する」と言う。
「豊かな緑に囲まれた環境の中でおおらかに育った生徒たちは、その多くが進学希望にもかかわらず、受験勉強はようやく3年生になってから、志望校といってもいくつかの地元大学しか頭に浮かばないという状態でした。受験直前になってから急に学力が伸びだす生徒たちを見て、せめてもう少し早く準備を始めていれば、もっと進路選択の可能性が広がると思ったんです。そのためには、早い時期から進路意識を目覚めさせることが必要だと考えました」
そこで始められたのが、自分の興味・関心に応じてグループに分かれ、研究を進める「MDP」であった。
興味・関心に応じてテーマごとに班に分かれて研究
「MDP」は生徒の進路意識の高揚を図るため、LHRの時間に学年の枠を取り払って行われる活動だ。
生徒はまず、「10年後の私」というタイトルで作文を書く。この作文がきっかけで、今まで自分の進路についてあまり深く考えたことのなかった生徒も、将来について考える機会を与えられる。続いて作文の内容を基に、興味・関心に応じてグループ分けが行われる。まず、人文、社会、環境・理工などの6つのブロックに、さらに文学、歴史、法学、経済、教員養成(小・中・高)、環境、理学、看護、芸術などの24グループに、そして、グループ内で自分が調査・研究したいテーマを検討し、そのテーマごとに班を作っていく。「MDP」の活動はその班ごとに行われることになる。そして、調査・研究を進める中で、必要ならばオープンキャンパスへの参加や講演会、座談会などの企画を実施していく。
「生徒たちは班ごとに様々な取り組みを企画し、教師はそれを実現するためのサポートを行います。大学に電話して出張講義を頼んだり、卒業生に協力を依頼したり、理工系の班がバイクの解体をしたいと言うので、近隣の業者からバイクを譲り受けてきたこともありました」
ある班が企画した取り組みには、誰もが参加できる。取り組みのほとんどは夏休みに行われるが、授業があるときでも実施することは可能だ。その際、各班が企画した取り組みに参加する生徒は“派遣”という形で、授業に出なくても出席扱いとなる。
様々な企画が生徒から挙げられ、実施されるが、全班がオリジナルの企画の実行を義務付けられているわけではない。考えがまとまらず独自の取り組みが形にならなくても、それはマイナス評価にはならない。『MDP』には、マイナス評価は存在しない。あるのはプラス評価だけだ。
「生徒は他のグループと比較されることはありません。もちろん、良いものは評価しますが、研究がうまく形にならなくても構わないというスタンスなんです。『MDP』はあくまで生徒の主体性を育てるためのものなので、やりたい生徒にはいくらでも活動の場を提供しますが、そうでない生徒に対して強要はしません。でも、主体的に活動する生徒の姿に、周りの生徒は触発されるはずです。そこに期待しています」
強要しないのは、教師に対しても同様だ。全教師が「MDP」においてどこかのグループを受け持っている。しかし、どのように生徒を指導していくかは、各教師に任されている。「ここまでやってください」「こういう風にやってください」と、やるべきことを規定はしないという。
岡山県立林野高校
設立93年。普通科の共学校。全校生徒約600名。ユ00年度入試では、岡山大5名、鳥取大4名をはじめ国公立大に合計51名が合格。私立大は、近畿大12名、大阪経済大11名など。部活動は、スキー部などが全国レベルの実力。
所在地/岡山県英田郡美作町三倉田58の1 電話/08687(2)0030
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岡山県立林野高校進路指導課長
上原正之
Uehara Masayuki
教職歴21年。本校に赴任して13年目。国語科担当。
「One for All, All for Oneの精神を大切にしてほしい」
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