VIEW21 2001.04  創造する 総合的な学習の時間

学年の枠を取り払い進路意識の向上につなげる

 学年の枠を越えて活動を行うのも、「MDP」の特徴の一つだ。進路意識が高まる3年生と、まだ大学受験のことを考えていない1、2年生が、一緒の班で活動する。当然1、2年生は3年生から刺激を受けるはずだ。
 「今までは、受験の生情報は部活の先輩から、ということが多かったと思います。『MDP』の班は、同じ興味・関心を持っている生徒が集まっているので、進路も似た志向を持っていることが多く、自分の進路に役立つ様々な情報が得られます。実際、看護系のグループで、今年新設の国立大看護学部に推薦で合格した先輩から、『来年は今より知名度も上がるだろうからレベルが上がるかも』というような話を聞いていました」

'00年度「MDP」で行った具体的行事
  • 教育実習生との座談会(6月)
  • 町内の環境美化センター見学(6月)
  • 保育所訪問(7月)
  • 裁判所・法務局見学(7月)
  • エンジンの把握(バイク解体)(7月)
  • 岡山大・岡山県立大オープンキャンパス参加(8月)
  • 古代吉備文化財センター見学(8月)
  • ボランティア活動(8月)
  • 追手門学院大教授による心理学の出張講義(8月)
  • 文化祭展示(MDP各グループの自主参加・本校卒業の学生による大学紹介)(9月)
  • 公務員卒業生懇談会(10月)
  • 看護学校の先生を招いての座談会(10月)
  • ボランティアについての岡山県立大の先生の出張講義(11月)
  • 町内の古墳発掘調査見学(11月)
  • 小学校訪問(11月)
  • 岡山大工学部の先生の出張講義(11月)
  • 実践報告会(全校)(11月)
  • 地元商工会より講師を招いての地元経済事情の座談会(2月)
  • 地元の美容師を招いての座談会(2月)
  • 美作女子大教授による水道水の環境講義(2月)
  • MDPの活動の記録集の発行(3月)

現在の取り組みを
「総合学習」へどのように発展させるか

「MDP」活動の成果が「総合学習」への道筋を示す

 今春、卒業したある生徒は英語に関心が高く、「MDP」を活用して自ら大学主催の英語スピーチコンテストなどに積極的にチャレンジしていた。その経験を通して身に付けた自信と明確な志望動機を胸に慶応大のAO入試にチャレンジし、見事合格を勝ち取った。また、他にも全国の大学から自分の学びたい学部・学科を探し出し、進学していった生徒が例年よりもかなり多かったという。
 「志望校として生徒が挙げる大学名が広範囲に広がって、アドバイスする我々教師も情報収集が大変になりました(笑)」と上原先生は言う。
 生徒が「学びたい学部・学科のある大学へ進学したい」というこだわりを持って志望校を選んでいることから分かるように、2年間に渡って取り組まれてきた「MDP」活動は、確実に生徒たちの視野を広げている。そして、同時にもう一つの大きな成果を残している。それは「総合学習」への道筋が見えてきたことだ。多くの高校が'03年度からの「総合学習」への不安を払拭できない中、林野高校では前倒しして'01年度から「総合学習」を開始する。「MDP」を基盤に、従来の様々な進路指導活動も取り込んで展開する予定である。
 「『MDP』の成果で一番大きいのは、遠回りのようでも生徒一人ひとりの興味・関心を大事にして、自主性を育てていけば必ず生徒は自ら伸びていくのだということを、我々教師が確信できたことです」
 年間6時間という限られた活動だった「MDP」は、今年度からは「総合学習」の核としてより本格的に展開される。新たな取り組みへの不安以上に、学校活性化への期待があるという林野高校の「総合学習」は、これから検討を始める高校にとっても大いに参考になりそうだ。


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