VIEW21 2001.04  特集 総合学習を軸に考える学校づくり

 もう一つの試みが、プレ課題研究でのモデルディベート活動だ。プレ課題研究は3年次で本格的に「課題研究」に取り組む直前、2年次後半の「情報基礎」の時間に行われる。それまで各系列に分かれて進路学習を進めてきた生徒を、系列の枠から外し、様々な進路希望を持った生徒がチームを組む。そして、「日本は原子力発電を積極的に進めていくべきか」「日本は外国人労働者を積極的に受け入れていくべきか」などのテーマを設定し、生徒は肯定派と否定派に分かれて資料を集めディベートに臨む。例えば、原子力発電は経済や社会、環境問題など複数の分野に渡る問題が絡まっている。生徒は多角的な視点を持つことを要求される。
 向井先生や米村先生によると、リーディングマラソンやプレ課題研究など、これら一つひとつを取り上げて、生徒が変わったとか変わらなかったと評価するのは難しいし、するべきではないと言う。すべての活動が有機的に結び付きながら生徒たちは成長していく。
 尾道北高校には、明確な目的意識を持ち、さらに大学や社会でも通用する総合的な学力を持った生徒を育てようという教育目標がある。個々の実践がバラバラに展開されているのではなく、目標に沿って原則履修科目の方向性が定められ、さらにリーディングマラソンやスピーチコンテストなどの自主的活動が行われている点が、同校の強みと言える。

65分授業や二期制、学習課題進度別授業で教科教育の充実を図る

 そして原則履修科目と自主的活動に加わるもう一つの柱は、教科教育である。同校では'00年度より、65分授業と二期制を導入している。
 65分授業の実施で、理科は時間をかけた実験ができるようになり、数学は一気に教科書を進め、次の授業で演習にじっくり取り組むなど、自在な授業計画が可能になったという。
 一方、二期制の一番のねらいは、授業日数の確保である。始業式、終業式、定期テストの回数が減り、その分を授業日に充てることができる。
 「今まで生徒たちは、学校行事とテストとクラブ活動に常に追われがちでした。それが二期制になったことで、生徒会活動を頑張る時期、ここは勉強に専念するときというように、生活にメリハリがつけられるようになったと思います。定期テストの間は空きますが、英数国は授業内にテストをすることで補っているので、十分対応できます」(向井先生)
 また同校では、学習課題別・進路別授業も実施している。これは各教科ごとに基礎基本、応用、発展などいくつかの授業が用意されており、生徒がそれを選べるというものだ。例えば国際文化系列に属し外国語学部を志望している生徒なら、英語は“発展”を選択するというように、自分の進路や学習進度に合った生きた授業を受けることができる。教科教育を充実させ、教科の学力向上を図ることも「キャリア教育」の重要な要素であると、同校では考えている。
 東風上校長は「国公立大合格者の数を増やすのではなく、確かな目的意識と総合学力を身に付けた生徒を希望する進路へと送り出すのが、本校の役割だと思う」と語る。同校が総合学科になってから最初の入学生である今春の卒業生は、その力を身に付けて巣立っていったに違いない。

図8 卒業生対象アンケート

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