VIEW21 2001.04  中学校の総合学習の事例研究

国立熊本大教育学部附属中学校

「総合的な学習の基礎・基本」を、まず習得させる

 今後、高校で「総合学習」が始まると、中・高校で同じテーマに取り組む可能性が出てくる。その場合、高校ではより専門性の高い課題を設定するなどの方向性が考えられるが、まずは中学校が「総合学習」でどのような取り組みを展開しているのかを把握する必要がある。「未来創造」という先進的な「総合学習」を展開する熊本大教育学部附属中学校の具体的な事例を基に、中学校における「総合学習」の現在と、高校の対応について見ていきたい。

 「みなさんは市電について、どんなことを感じていますか。僕たちは校内で行ったアンケートを基に、市電利用者を増やすためのサービス向上の案を熊本市への提言という形で考えました」
 メモも見ず、落ち着いた声。堂に入った大人顔負けの発言が続く。これは「未来創造II」で「交通今昔物語」を研究テーマに選んだ生徒たちの発表会の一コマ。'00年12月8日、この日、熊本大教育学部附属中学校では、「交通今昔物語」以外にも「環境ISO附中プラン」「めざせGlobal Citizen!」など計8コースの研究成果の発表が行われた。

3年間を見通した「総合学習」

 「未来創造」は、いわゆる「総合学習」にあたるものだ。同校では'96年度よりこの科目を実施している。1年生を対象とした「未来創造I」(以下「未来I」)と2、3年生対象の「未来創造II」(以下「未来II」)があり、それぞれ目標が異なる。
 まず「未来I」は“総合的な学習の基礎・基本”の定着をねらいとしている。「総合学習」では観察力や記録力、メディア機器の操作能力など多種の能力が要求される。こういった準備が備わっていない生徒に、いきなり「テーマを設定して調べなさい。その結果を成果物にまとめなさい」と要求をしても実現は難しい。そこで同校は「総合学習」で必要とされる技能を学習計画力、問題解決法、メディア・リテラシーなど11の領域から計51項目をリストアップし、“総合的な学習の基礎・基本”を定めた。「未来I」は、この習得が第一の目的だ。
 “総合的な学習の基礎・基本”を身に付けた生徒たちは、「未来II」で学校が提示したいくつかのテーマの中から、自分の興味のあるものを2、3年生の異学年合同のグループ活動で追究していく。今度は課題探究が主で、技能はその活用手段だ。そして冒頭で紹介したようにグループ発表を行った後、3学期には成果を個人レポートにまとめる。同校ではこの「未来I・II」に加えて、今年度からは3年生の後半に、これまでの学習を振り返り、「自分の生き方」を考えさせる「未来III」も開始予定だ。「未来III」が導入されれば、Iで技能習得、IIでテーマ追究、IIIで振り返りという流れが完成することになる。このように同校では3年間を見通した「総合学習」を設計している。


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