VIEW21 2001.06  英語教育の新機軸

英語教育の新機軸

熊本県立熊本高校

3年間の前半期で
コミュニケーションのための英語力を習得

 毎年、難関大に多数の合格者を輩出している熊本高校。同校の英語教育は、コミュニケーションの手段としての英語力の養成という方針の下に行われ、同時に高い進学実績にもつながっているという。そんな同校の英語教育はどのような形で行われているのか、吉田祐一先生と山本朝昭先生に、その概要についてうかがった。

4技能をバランスよく

 熊本高校の英語科では、3年間の前半期の1年半で「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく身に付けさせ、後半期は受験を見据えた授業を展開している。英語I、IIでは英文の大意を把握することを重視し、1年次から自由英作文を書かせるなど、前半期はコミュニケーションの手段としての英語を意識した指導がなされている。中でもOC(オーラルコミュニケーション)・Bは、同校の前半期を象徴する授業だ。
 「私たちはOC・Bを、OC・ABC、あるいはOC・Dと表現することがあります。リスニングにとどまらずスピーチ、ディスカッション、ディベートなど様々なことを行うからです」(吉田先生)。
 OC・Bでは、まず月に1回課される自由英作文をベースに、生徒がスピーチを行う。そしてALTと教師の会話を聞き、それに関する問題を解く。その後、会話で使われた表現を用いて、ペア、あるいはグループで練習を行う。
 コミュニケーション重視の前半期の集大成に位置付けられるのがディベートだ。日本語でさえ行うのが難しいディベートを英語で行うことを、熊本高校では前半期の最終目標としている。そして授業はその後、受験を意識した内容へと転換する。山本先生はこう語る。
 「ディベートは完璧にできるようにはならなかったかも知れません。でもディベートの過程で聞くこと、話すことを繰り返し、生徒はうまくいかずストレスを感じたはずです。そのストレスは自分の英語における弱点、例えば語彙力や文法力の不足などに起因していて、それを補う学習が必要だと生徒は気付いてくれました。その気付きが、後半期の授業へのモチベーションのアップにつながったんです。だから、方向転換は生徒にとってあくまで自然なものでした」
 今年3月の卒業生の場合、2年次1学期時点の模試の成績はあまり芳しいものではなかったという。要因は文法や語彙の力の不足にあったようだ。だが1年後にはその不足を補い、模試などの成績に大きな伸びが見られた。
 さらにコミュニカティブな要素を重視する方向にあるセンター試験では、多くの高校が例年より平均点を下げる中、同校は前年並の平均点を維持した。前半期の発信型の授業は、入試にも確実にプラスの効果をもたらしているようだ。


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